期待の大卒ルーキーがベールを脱ぐ。J2モンテディオ山形MF横山塁(22=東洋大)は、右サイドハーフが主戦場のアタッカーだ。今季初陣となる今日19日のアウェー、ザスパクサツ群馬戦では、大学の先輩であり、19年に山形でプレーしたベルギー1部オーステンデMF坂元達裕(25)も果たせなかった開幕スタメンをつかむ可能性も十分だ。プロ1年目の目標に「10ゴールへの関与」を掲げ、即戦力としてJ1昇格に貢献する。

韋駄天(いだてん)ドリブラーの横山が右サイドを切り裂く。50メートル走は手動計測で5秒8。スペースがあれば積極的に前へ前へと縦に仕掛け、1人でシュートやクロスまで完結できるのが特長だ。パンチ力のある左右のキックも武器で、攻撃陣に新風を吹き込む。

「得点は取れるだけ取りたいが、1年目で10ゴールに関われたらインパクトが大きい。数字にはずっとこだわっていて、プロの世界ではよりこだわらないといけない。『10ゴール関与』を目指して頑張りたい」

昨年7月に山形加入が内定した。大学卒業後は「会社で働くというイメージがなく、サッカー選手になるしかない」。同級生が就職活動をする傍ら、進路はプロ一本に絞った。「山形の練習に参加したときに縦に速いサッカーで『本当に自分が生きるな』『ここなら率直に上を目指せる』と、すぐに決めました」と迷いはなかった。

先月から静岡、鹿児島、千葉と続く長期キャンプで充実の時間を過ごす。プロと大学とでは「スピード感もそうですけど、守備の強度や攻撃の強度が違う」。より高いレベルに身を置くことで「1日1日、吸収できるものがいっぱいある」と収穫を強調する。

東洋大では1年時からAチームでプレーした。3学年上にはオーステンデMF坂元、2学年上にはJ1浦和MF松崎快(24)と個性派ドリブラーが身近にいる環境だった。「攻撃のテンポを意識し『それぞれが特長を出して』というサッカーなので、けっこう自由でやりやすかったです」。昨季は関東大学リーグ2部で10ゴールを挙げて得点王。リーグ2位で1部復帰に導き、総理大臣杯全日本大学トーナメント準優勝にも貢献した。

高校時代は多くのプロを輩出する東京U-18に在籍した。2年時までボランチを務めたが、同級生にはトップチームに昇格したMF品田愛斗(22)ら選手層が厚く、なかなか試合に絡めなかった。3年時でサイドハーフに転向すると、夏頃から主力に定着。17年の日本クラブユース選手権(U-18)、高円宮杯U-18プレミアリーグの優勝メンバーになった。

東京U-18ではマジョルカの日本代表MF久保建英(20)ともチームメートだった。2学年下だが、当時から当たり前のように「飛び級」で活躍。「中3のときに高3の大会で得点王になっていたし、タケフサは衝撃でした」。ずばぬけた才能に驚かされてきた。「途中出場でも結果をすぐに残せて、スタメンでも全然できちゃうし、(上のカテゴリーだと)普通は緊張すると思うが、物おじしないのはすごい」と振り返る。

将来は久保が活躍するスペインリーグを目指す。子供の頃からの憧れの場所で、U-19日本代表として同国に遠征した際に、充実した環境面にもひかれた。U-19スペイン代表と対戦し「相手の右サイドにめちゃくちゃ速い選手がいて『すごいな』『こんな選手がいるんだ』と自分も右サイドだったので、もっとスペインに行きたくなった」。大きな目標に向け、そのスタート地点に立った。

今日19日のアウェー群馬戦から長く険しい42試合が始まる。先輩坂元は19年、山形でのプロ1年目で7ゴール3アシスト。6位でJ1参入プレーオフに進出、昇格は逃したものの欠かせない戦力として躍動した。

「チームが目標に掲げるJ1に行くためには1人1人の力、活躍が大事になる。タツ君(坂元)も『10ゴールに関わりたい』と言っていたみたいで、目標をしっかり達成している。自分も負けないように頑張りたい」

山形の新星がプロ1年目から異彩を放つ。【山田愛斗】

◆横山塁(よこやま・るい)1999年(平11)9月30日生まれ、東京都江東区出身。小学1年で東京のスクールでサッカーを始め、バディSC江東、東京U-15深川、東京U-18、東洋大を経て、山形に今季入団。18年にはU-19日本代表に選出。背番号「24」。家族は両親と弟。利き足は右。180センチ、68キロ。