鈴鹿のFWカズ(三浦知良、55)が、チームの勝利に貢献した。9月4日に負傷離脱から復帰して以来、7試合連続ベンチスタートのカズは後半44分に交代出場。出場直後には、相手のクロスを左足でブロックするなど守備で奮闘し、逃げ切り勝利につなげた。

ロスタイムを合わせて約5分、ほとんど「見せ場」はなかった。1点リードしている状況で、相手は猛攻を仕掛けてくる。前線を走り回ってプレッシャーをかけたと言えなくもないが、早めにゴール前にロングボールを入れる相手の脅威にはなれなかった。

ボールに触れたのは、交代直後のブロックと、終了間際に味方のクリアボールを拾ってパスをつないだくらい。「何もなかった」と本人も自嘲気味に話したが「クロスをカットしたプレーは、けっこう大切なんですよ」と強調した。足に当てたことが重要なのだ。

29年前の10月28日、カズの足は届かなかった。ドーハで行われた94年W杯米国大会アジア最終予選。日本は最終戦でイラクを2-1とリードし、W杯初出場が見えていた。終了間際、相手のクロスにカズが足を伸ばした。しかし、足先をかすめたボールを頭で決められた。日本中が涙した「ドーハの悲劇」になった。

たとえカズの足が届かずに滋賀のクロスが入っていたとしても、失点したかは分からない。それでも、必死に足を伸ばしたから、自ら「大切なプレー」と胸を張れた。まさか「ドーハ」を思い出したわけいだろうが、長いプロ生活の経験で「危険なポイント」は熟知している。それが、55歳の武器にもなっている。

リードした終盤に出場することが続き、試合を「終わらせる」ことが求められる。先発していた今季序盤は試合ごとに「ゴールのにおい」が強くなっていった、しかし、今はほとんど「におい」がしない。交代出場で試合を落ち着かせ、スタンドを盛り上げてチームの後押しをする。それが、カズに求められる仕事だ。

もちろん、先発出場への意欲は見せるし、三浦泰年監督も「少しずつ出場時間を伸ばして、先発で出したい」とは話す。ただ、出場時間は試合展開によって変わる。カズ自身も「先発復帰して(足が)どうなるかは分からない。やっていないので」と慎重に話す。

それでも、残り5試合に全力を尽くす。J3昇格圏内の奈良クラブやFC大阪との対戦が残るのも、モチベーションになる。現在8位だが「勝ち続ければ4位まで狙える。僕たちができるのは試合で結果を残して鈴鹿を盛り上げ、またライセンスがもらえるようにすること」と11月に迫る百年構想クラブ再申請に向けて話していた。【荻島弘一】

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