跳んだ! 決まった! 舞った! 日本フットボールリーグ(JFL)鈴鹿ポイントゲッターズのFWカズ(三浦知良、55)が、ホーム最終戦でサポーターに「カズダンス」を届けた。半年ぶりに先発復帰したカズは0-1の前半24分、左CKからゴール前に流れたボールに頭から飛び込み同点ゴール。2戦ぶりの今季2点目で、JFL最年長得点記録を55歳259日まで更新。「70歳までやるよ」の仰天発言まで飛び出した。

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誰よりも早く、カズの体が反応した。1点を追いかけて得た左CK。DF今井が頭で流したボールに「一瞬のひらめき」で動いた。相手GKの目の前に飛び込んでヘッド。白髪交じりの頭がとらえたボールが、ネットに突き刺さった。

全力でベンチ前に走るとチームメートを従えて「前よりもいい出来」のカズダンス。1-1に追いつく価値ある得点に、3000人の大歓声と拍手に包まれたスタンドが大きく揺れた。りさ子夫人と応援に来た俳優の長男りょう太も「生で見たのは(復興支援チャリティー時の)中学生以来。レアものです」と喜んだ。

今年1月末、新天地を求めて鈴鹿にやってきた。目標にした「J3昇格」がクラブの不祥事で6月に消滅した。カズ自身も5月15日に左太ももを負傷。55歳の体は再発を繰り返し、3カ月半も戦列から離れた。9月に復帰してからも10試合連続途中出場。思い描いたシーズンではなかった。

支えは、ファンの声援だった。「町で声をかけられるんだ。『頑張って』『来てくれてありがとう』ってね。幸せだよ」と話す。子どもたちの姿も多い。「どこまで知ってくれているのか分からないけど、うれしいよね」と言って、一人一人サインに応じる。

子どもたちに「カズダンスを踊って」と迫られこともある。「ゴールを決めて踊るので、試合を見に来てね」と返すが。この日まで実現できず。約束を果たして「子どもたちの前で踊れてよかった」と笑った。

多くの人に「勇気」を届けてきたカズだが、自身も多くのファンに支えられている。期待に応えるためにピッチに立ち、ゴールを狙う。「みなさんの声援が勇気になり、ゴールにつながりました。1年間ありがとうございました」。試合後に、そうあいさつした。

兄泰年監督は「試合に負けたのは残念」と言いながらも先発起用に応えたカズには満足そう。「60歳までできると思いました」と話したが、それを聞いた本人は「いや、70歳までです」と仰天発言。これまで「辞めなくちゃいけなくなるから」と目標年齢を言わなかった男が、初めて口にした70。常識を覆してきただけに、本気かもしれない。

鈴鹿との契約は来年1月31日まで。その後のことは「まったくの白紙」と話した。「継続も大切なので、鈴鹿が優先」と言いながらも「やりがいがあるか。どれだけ熱くなれるかが重要です」とも話したことからも、J3昇格資格がないままでは契約延長は難しい。シーズン最後に鈴鹿への感謝を込めた惜別のダンスを置き土産に、カズは大好きな「寅さん」のように再び旅に出る。【荻島弘一】