名古屋グランパスに今夏加入したMF久保藤次郎(とうじろう=24)が、柏レイソル戦で移籍後初先発を果たした。

右のウイングバック(WB)で出場すると、後半16分までプレー。持ち味のスピードを生かして何度もサイドを駆け上がった。チームは敗れたが、下部組織の「グランパスみよしFC」出身者として初のトップチーム所属の選手となった久保が、名古屋の選手として大きな一歩を踏み出した。

東北出身の両親が伊達政宗の仮名から取って名付けたという「藤次郎」コールを浴びた。後半9分、久保が右サイドでボールを持つと、スルスルと内側に進入。1人目のDFをステップでかわすと、カバーに来たDFとぶつかりながらもサポーターの目の前で左足でシュートを放った。

シュートを上にふかし、「自分の得意な角度ではあったんですけど、たぶん自分が1番生きるのは、縦に行くところ。(前田)直輝さんが縦に走っていて、それが悪いわけではないし、カットインして左足で打てばいい話なんですけど、これからもっと自分の良さを伝えて、もっと自分の生きるところを味方に伝えないとダメだなっていう風に感じました」。

名古屋加入後、出場時間は24分。ともに終盤での投入だった。その中で、初めて回ってきた先発の出番だった。守備時は最終ラインまで下がり、チャンスとみるや、相手ゴール前まで自慢の快速を飛ばした。しかし、自身では納得のいくパフォーマンスではなかったという。

「試合が始まってなかなかゴールに触れず、自分の良さはなかなか出せず、勝利に貢献できず終わってしまった。リーグ戦でスタメンでいけるかどうかっていうのは結構、この試合にかかっていたと思うんで、自分の中では、サッカー人生のちょっとしたキーポイントになる試合だと思っていた。そういう意味では、何もできずに途中交代っていうのは残念でした」

クラブの下部組織の中でも「分家」に当たる「グランパスみよしFC」の出身。久保の中学時代を知る当時のチームメートは「背が低いけど、スピードのあるタイプだなって感じでした。高校で一気に伸びたイメージです」と印象を語る。

名古屋のユースには昇格できず、岐阜の帝京大可児高、中京大を経て、当時J3の藤枝入り。ルーキーで10得点をマークしてチームをJ2に押し上げると、今季も7月までに5ゴールを決めて名古屋へステップアップを果たした。

J1のスピード感や強度には適応しつつあるという。「あとは味方との連係の部分と、90分出られる準備のところをしっかりやれば、全然力は通用するんじゃないかなって思います」。

子どもの頃からスタジアムで応援し、憧れ続けたクラブへの加入した。「『みよし』ってどうしても、ユースに入れなかった子とか、悔しい思いをしていると思うので、まだまだ全然ですけど、そんなの関係なく誰にでもチャンスあるよっていうのは伝えられたら」と自覚を持ってプレーしている。先のチームメートは、「『みよし』出身として初のトップに入ったということで、今所属してる選手たちにも夢を与える存在になってくれたなと思います!」とエール。多くの人々から期待を寄せられる「みよしの星」として、ピッチで躍動する。【佐藤成】