モンテディオ山形MF気田亮真(26)は今季、ベガルタ仙台から完全移籍で加入。〃みちのくダービー〃と呼ばれる隣県のライバルチームへの移籍を打診され悩んだものの、自身の成長を選択。新たな環境を求めて移籍を決断した。新天地で背番号「10」を背負う気田が、移籍の理由や今季へ懸ける思いを語った。【取材・構成 木村有優】

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23年12月28日、気田の山形移籍発表に衝撃が走った。クラブを通じてリリースされたコメントは、1100文字にもわたる長文。3年間を過ごした仙台への愛と感謝の思いがつづられていた。だが、仙台のあまりの居心地の良さに「自分の中で甘えや慣れがあるのではないか」という違和感があった。気田はその違和感を「サポーターのためにプレーをしている自分になっていた。いつでも背中を押してくれるサポーターには感謝をしているが、自分を主人公に戻したい」と表現。思い切って環境を変え、自身の成長スピードを高めることを選択した。その決断に仙台FW中島元彦(24)は「バチバチにやり合おう!」とピッチでの再会を誓い、新天地へと送り出した。

昨シーズンの山形は8連敗などもあり、一時はJ3降格圏に沈んだものの、シーズン途中から就任した渡辺晋監督(50)が、J1昇格プレーオフ(PO)圏内の5位まで引き上げ、惜しくも敗退となったが、2年連続でPOを戦った。気田は「渡辺さんのチームスタイルに魅力を感じた。山形は試合の主導権を握り、基盤が固まっているので、その中でプレーをしたかった」と語り、移籍のもうひとつの決め手に山形のチームスタイルを挙げた。

隣県のライバルチームへの移籍に「禁断の移籍」という声も多く挙がった。だが、これは気田とのダブル移籍が発表されたMF加藤千尋(25)、さらに14年4月から19年まで仙台で指揮を執り、J2山口監督を経て、22年から山形のコーチに就任した渡辺監督も一緒。指揮官は「これからもいろいろあると思うけど、思いっきりプレーして、成長してほしい」と声をかけ、その覚悟に寄り添った。クラブからはエースナンバーと呼ばれる背番号「10」を提示された。これまで数々の歴史が刻まれてきたナンバー。気田は「自分の成長のために必要な材料となる、良い意味での責任感やプレッシャーを感じている」と覚悟を示した。

新天地で迎える今季。気田は「残せる数字は全てトップを取る」と意気込み、「全てにおいて成長スピードを上げたい。良い選手がそろっているので、競争心を高めながら、最後はチームを『J2優勝』に導きたい」と力をこめた。2月25日の千葉との開幕戦では先発出場し、3-2で白星スタート。移籍後初ゴールはお預けとなったが、歓喜の瞬間はそう遠くはない。気田の覚悟と熱い魂が「J2優勝」の未来をこじ開けるカギとなる。

◆気田亮真(きだ・りょうま)1997年(平9)8月12日生まれ。千葉県出身。市原・千葉アカデミー-専大。20年、長崎に加入し32試合出場4得点。21~23年仙台では計100試合に出場し15得点をマーク(いずれもリーグ戦)。今季から山形に完全移籍した。172センチ、66キロ。