東京ヴェルディの城福浩監督(62)が、自らの信念として「アクチュアル・プレーイングタイム」にこだわる姿勢を強調した。

9日のアウェーでのセレッソ大阪戦に向けて7日、東京・稲城市のクラブハウスで会見し、熱き思いを全開した。開幕から2試合(横浜F・マリノス、浦和レッズ戦)を終え、1分け1敗と勝利が得られていない。どちらも先制点を奪いながら後半44分にPKで追いつかれるという苦いものだった。

それでも指揮官は「時間をうまく使わなければいけない。ただ周りから時間を使っていると思われるような、時間の使い方は手段としてやらない。自分たちのボールを大事にしていく。自分たちの方にボールがあれば相手は攻めようがない。チームとしての統一感、相手にスキを見せない」と誓った。

城福監督が「時間稼ぎ」をしないのは、サッカーの魅力を損なうと考えるから。大事にするのが「アクチュアル・プレーイングタイム」。つまり「実際にプレーが動いている時間」のこと。90分の試合時間の中で、そのアクチュアル・プレーイングタイムは世界的に見ても50~60分が平均だ。過去のデータによると、Jリーグでは41分ほどしかないケースもあった。

サッカーはスローイン、ゴールキック、コーナーキック、ファウルなどでプレーが中断する。例えばタックルを受けた選手が過剰に痛がり、時間を使ったあげく、何事もなかったようにプレーを続行するケースはよく見る光景だ。また、セットプレーに延々と時間を使い、相手を心理的に揺さぶるケースもある。そのような止まった時間を短くすることが、観戦しているファンやサポーターに対し、サッカーの魅力を届けられるという考えが強い。

「志向はおのおのあるし、どんなサッカー(スタイル)を選んでもいいし、多様性があっていい。スペインでもすべてつなぐサッカーではない。ただ、アクチュアル(プレーイング)タイムが多くない時間があることに平気でいられるのは日本にプラスにはならない。審判委員会ともフランクに話しますが、日本に何かローカルルールを持ち込んでみたらと提案もしました」

そういう思いも踏まえ、16年ぶりに東京VがJ1へ戻ってきたことの意味を重く考えている。

「自分たちはボールを大事にする。(以前は)このチームにボールを大事にしろと言えば、バックパスをしていた。だが今は相手の裏を取る、ゴールに向かえるパスが増えた。簡単にはバックパスをしない。そういうプレーが(開幕戦の先制点となった)山田楓喜のFKとかに表れている。去年から3試合連続で5万人を超える観衆を経験している。その中で我々は何を見せられるのか? ヴェルディが16年ぶりにJ1に戻ってきた意味はそこにあると考えている。時間稼ぎの選択肢はない。フィロソフィーという言い方がいいか分からないが、何かを伝えたいし、何かを残したい。貫くものは貫きたい」と熱弁した。

勇気を持ってボールをつなぎ、献身的に守る。その姿勢を貫徹した上で勝利をつかみ取る。Jリーグの価値を高めるため、ヴェルディの流儀を貫く。熱血漢はブレない。