<J1:G大阪5-1大宮>◇第26節◇16日◇万博

 G大阪の新星、宇佐美貴史(18)が、驚異の30メートルドリブル弾を決めた。同点の前半32分に相手ボールを奪うと、自ら敵陣を突破して最後は左足で決勝弾。今季最多5得点の口火を切り、5-1で大宮を破る原動力になった。得点王争いを繰り広げるFW平井将生(22)も2得点をマーク。若武者の活躍で来季のアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)出場圏内の3位浮上。暫定ながら首位名古屋と勝ち点8差とし、奇跡の逆転優勝へかすかな望みをつないだ。

 秋の深まりとともに、G大阪の攻撃力が増してきた。本拠地万博で今季最多5得点の大勝劇。火を付けたのは宇佐美だ。同点の前半32分。中央で相手ボールを奪い、ドリブルで一気に加速した。ペナルティーエリア付近でDF2人に囲まれながら、わずかなシュートコースを見逃さず左足で勝ち越し弾を決めた。約30メートルの突破から挙げた1発に、日本の未来を背負う新星のすごみが凝縮されていた。

 宇佐美

 (相手を)かわしたシュートを意識していたので、妙に落ち着いていました。点を取れたことが一番。でもまだ足りないところもある。もっと成長しないと世界に通用しない。

 遠慮のないところが、大物の気配を漂わせる。試合後のヒーローインタビューを、2得点の平井に譲ったことが不満だったようだ。「今日のヒーローはオレやと思っていたんですけどね。まあ、それはどうでもいいか…」とボソリ。平井は、同じユース出身で5歳も上だが「ショウキ(将生)」と呼び捨てにする。シュート31本の乱れ打ちで5発大勝の導火線になった18歳は、どこまでも規格外だ。

 その一方で、泣き虫な一面もある。U-19(19歳以下)日本代表として出場したアジア選手権で韓国に敗れ、来年のU-20W杯出場を逃した際。周囲を心配させるほど泣いた。その理由を「全力を尽くして負けたら、泣ける。もし妥協していたら、負けても涙は出ない。涙は自分が頑張っている証です」と説明する。18歳は何事にも全速力だ。

 その姿に西野監督も「(得点は)アイツの真骨頂だ。数字は難しいが、我々は(優勝を)ギブアップしてはいけない」という。暫定ながら首位名古屋と勝ち点8差。今季無冠では終われない。怖いもの知らずの高校3年生が、奇跡の逆転Vを狙うG大阪を引っ張っていく。【益子浩一】