初の元Jリーガーの競輪選手が誕生した。広島などに所属した河野淳吾(28)が、競輪選手の国家試験「選手資格検定」に合格し、日本競輪学校を卒業したことが18日、分かった。静岡の清水商のDFとして全日本ユースで優勝。卒業後は広島や横浜FCなどでプレーした。故障のため08年にサッカー引退後は妻子を広島に残して新たな世界にチャレンジしていた。来年1月にプロ競輪選手としてデビューする。

 新たな世界へ飛び込んだ元Jリーガーの挑戦が実った。15日に静岡・伊豆市大野の日本競輪学校の卒業式を終えた河野が、11月に選手登録する。年明けの1月にはプロ競輪選手としてバンクを疾走する。「素直にうれしい。反対もしないで見守ってくれた家族にも感謝したい」と、喜びを語った。

 長身センターバックとして清水商で全国制覇。卒業と同時に広島に入団した。同期には闘莉王(現名古屋)がいた。その後は移籍を重ね、07年にJ2徳島で「右すね開放骨折」の重傷を負った。懸命なリハビリで再起したが、08年シーズン終了後にサッカー界から引退した。他クラブから誘いもあったが「以前のパフォーマンスが発揮できない」の思いと、提示された厳しい契約条件に、決意が揺らぐことはなかった。

 すでに祐夫人(30)と長女里羽ちゃん(5)がいた。河野は「好きなサッカーで家族を養っていけたらベストだったけど。そればかりを考えていてもしょうがなかった」と、家族を支えるために体力で勝負できる新たな道を求めた。

 引退後に知人の紹介でS級1班選手の高木隆弘(41)と出会い競輪への転向を決意した。単身で故郷神奈川に戻り、高木宅に住み込みで弟子入り。つらい生活に何度も投げだしそうになりながら、昨年7月に日本競輪学校の試験に合格。つらい練習と4人部屋の寮生活にも耐えた。河野は「合格はしたが、これからが重要。目標はプロの世界で活躍すること」と決意を語った。【前田和哉】