<プレナスなでしこリーグ:AS狭山1-9INAC神戸>◇第12節◇9月30日◇NACK

 INAC神戸のルーキーMF田中陽子(19)が、リーグ戦初ゴールを決めた。AS狭山戦の後半33分から出場すると、7-1で迎えたロスタイムに、こぼれ球に鋭く反応して右足を振り抜いた。U-20(20歳以下)女子W杯銅メダルに導いたヤングなでしこのエースは、常勝チームでも存在感を示す大きな1歩となった。チームは快勝し、2位日テレとの勝ち点5差をキープした。

 ヤングなでしこのヒロインが、INAC神戸でも観衆を沸かせた。後半33分、田中陽はMF川澄に代わって中盤右サイドに入ると、果敢にゴール前に迫った。同ロスタイム、右サイドからのクロスが1度は頭を越えたが、相手DFのトラップミスを見逃さず鋭く反応。右足を大きく振り抜き、ゴール左隅に突き刺した。仲間にもみくちゃにされながら、笑みがはじけた。

 すでにリーグ杯では得点しているが、リーグ戦は3戦目の出場で初ゴール。「点差もあったし、得点シーン以外でも、自分に決めさせようとしてくれていたのでよかった。記念日という感じではなく、これから始まるって感じです」。直前の同42分には大黒柱のMF沢からのパスを受けシュートも、ポストに阻まれた。悔しさも瞬時に晴らした。

 約1年前にはサッカー人生の選択に迷っていた。世代別代表で世界とのフィジカルの差を感じたため、JFAアカデミー福島卒業後は語学留学も兼ねて、欧州クラブ挑戦を希望していた。昨夏には英国の強豪アーセナルやバーミンガムシティーに練習参加。その後にINAC神戸から誘われ選択肢が広がった。

 「やっぱりINACを選んでよかった。正しかったと思う。沢さんの予測力、大野さんの体の使い方やボールのためを近くで参考にさせていただけていますから」。沢からは技術だけでなく「思い切りの良さや積極的にシュートを打つ陽子の良さを意識して」とアドバイスをもらっているという。その成果の一端を示したゴールでもあった。

 だが、チームでレギュラーを獲得していない事実に、満足はしていない。「今日点を入れたことよりも、もっと練習からプレーの質をあげてアピールしたい」と田中陽。向上心を持ったヒロインが、沢や大野の“アシスト”で大きな初ゴールを決めた。【鎌田直秀】

 ◆田中陽子(たなか・ようこ)1993年(平5)7月30日、山口県生まれ。FCレオーネからJFAアカデミー福島を経て、今季INAC神戸入り。U-20女子W杯日本大会では全6試合に出場し6得点。得点ランク2位でシルバーシューズ賞受賞。好きな選手はスペイン代表MFイニエスタ。サッカー以外では、水泳が得意。趣味は服集め。157センチ、47キロ。足のサイズは22・5センチ。