<高校サッカー:日大藤沢2-1静岡学園>◇準々決勝◇5日◇浦和駒場

 7年ぶり4度目出場の日大藤沢(神奈川)が静岡学園に競り勝ち、初の4強入りを決めた。骨盤手術を乗り越えたFW前田マイケル純(3年)が先制し、インフルエンザで隔離されていたFW今井裕太(3年)が今大会初出場で決勝点を奪った。出そろったベスト4には星稜(石川)が3大会連続、流通経大柏(千葉)が4大会ぶり、前橋育英(群馬)が6大会ぶりに駒を進めた。関東勢3校が残るのは88年度以来26大会ぶりの記録となった。

 季節外れの“桜”が咲いた。初のベスト4進出を決めた日大藤沢イレブンが、スクールカラーのピンクに染まった応援席に向かい、拳を突き上げる。就任10年目で歴史を塗り替えた佐藤輝勝監督(36)は「10年で日本一になると言ってきましたが、実感がわかない。現役時代(日大三島高3年時)に負けていたし『学園』の強さは誰よりも分かっていたので」と興奮した。

 ドラマは終了間際に起きた。1-1の後半38分、スローインから「日藤のマラドーナ」ことFW田場がDFをかわすと、ラストパスのようにボールが前へ流れる。そこに走り込んだFW今井がボールに追いつくと同時に右足を振り、対角のゴール左隅に流し込んだ。

 「迷惑を掛けたので決めたかった」。今井は開会式前日の先月29日に発熱。インフルエンザの診断で強制隔離された。最高38度8分の高熱を出し、最後の冬なのにテレビ観戦の日々。父公弥さん(49)が「家で話しかけても『何だよ!』ってイラついていた」と話すように荒れたが、こっそり近所の公園でボールを蹴り我慢。そして、後半40分限定の大会初出場で結果を出した。

 先制も苦労人だった。後半27分に途中出場したFW前田が、その2分後に決める。右FKをニアのDF小野寺が頭で流したところに飛び込み、ゴールに体ごと押し込んだ。1回戦の徳島市立戦で先発も好機を逃し2、3回戦は控えに回されただけに「触らなくても入ったかもしれないけど点がほしかった」。1年の冬に骨盤が剥離。腸腰筋に当たって激痛が走った。切除手術を受けて4カ月半の離脱を乗り越えた男が決めた。

 10日の準決勝は星稜(石川)と対戦。DF吉野主将ら、インフルエンザで離脱していた8人が戦列復帰できる見通しだ。病み上がりの今井も「4日間の練習で動きの質を上げたい」。上昇気流で神奈川県勢初の優勝へ突き進む。【木下淳】

 ▼関東勢の4強データ

 前回大会では1校も準決勝に進出できなかった関東勢だが、今大会は88年度以来26大会ぶりに3校が4強入り。各都道府県代表校制が制度化された83年度以降、4強を関東勢が独占したことはないが、3校は88年度以来2度目になる。26年前は市船橋(千葉)前橋商(群馬)暁星(東京)の3校が4強入りし、最終的に静岡の清水商が優勝、市船橋が準優勝だった。ちなみに、関東勢同士の決勝は96年度大会が最後で、市船橋がFW北嶋秀朗のゴールなどでMF中村俊輔ら擁する桐光学園(神奈川)を2-1で下し優勝した。