けが人の穴は俺が埋める。現在、7人の故障者を抱える山形に、頼れるユーティリティー・プレーヤーが戻ってきた。1日に右足首を捻挫したDF宮本卓也(28)が9日、横浜戦(ニッパ球=13日)に向けての練習再開日に復帰した。トレーニング中は笑顔でボール回しを行うなど、回復具合は良好。本職はサイドバックながら中盤もこなせるだけに、緊急事態には欠かせない存在。小林伸二監督(50)も最善の起用法を模索していた。

 宮本はこの日、FW長谷川とともに全体練習に合流した。「アップの入りは気を付けた」というように足の具合を確かめながら、ゆっくりと走り始めた。ボール回しでは、治りたての右足で果敢にボールを奪いにいくなど、精力的に動いた。「状態はまあまあ。今週の練習次第だと思う」と横浜戦での復帰を視野に入れていた。小林監督も「ミーモ(宮本)も様子を見てからだけど、良さそうだった」と安堵(あんど)の表情を浮かべていた。

 今こそ、マルチな才能を生かすとき。現在、故障者7人を抱えるチーム。そのうち、宮本はFW以外のポジションを埋め合わせることができる。特に厳しいのが右サイドハーフ(SH)。昨季まで絶対的な存在感を発揮したFW北村、さらに今季、北村を脅かすまでに成長したMF広瀬も6日の浦和戦で離脱し空席となっている。小林監督は、宮本に「(無難にこなせる)ボランチか、SHもどうだ?」と打診。普段から大きな発言をしない男は「濁しときました」と快諾はしなかったが、指揮官の信頼は大きい。

 SH起用なら、DF小林もしくはDF園田との右サイドコンビは「鉄壁」となる。小林監督も「右で追い越しあって攻めても面白いし、何より手堅いやろ」と不敵な笑みを浮かべた。165センチと小柄だが、いざとなればセンターバックでもプレー可能。スクランブル状態に「みんなでカバーしましょうよ。俺1人じゃあ無理…」とぼやいたが、何色にも染まる宮本の存在は心強い。【湯浅知彦】