<J2:東京V1-0鳥取>◇第24節◇15日◇味スタ

 ロンドン五輪代表のFW杉本健勇(19=東京V)が“旅立ち”のゴールを決めた。ホーム鳥取戦の後半21分、決勝点を挙げた。C大阪からのレンタル期間が17日で終了するため、この日が東京Vでのラストゲーム。試合終了から約5時間後に英国へ出発するという慌ただしい日程の中、五輪の「切り札」として結果を残した。

 涙が止まらない。決勝弾を決めた試合後、FW杉本は五輪壮行セレモニーを予定通り受けた。直後、退団のあいさつとなった。「正直言うと、今年は東京Vのために残留したい気持ちがあったけど、うまくいかなくて…。セレッソで頑張ることになりました。本当にこのクラブが大好きです」と涙声がスタジアムに響く。五輪前最後の試合が東京V最後の試合となった。

 勝ちへの強い執念があった。後半21分、右から入ってきた低いクロスを右足でゴール左隅にたたき込む決勝弾。そのまま観客席へユニホームのエンブレムにキスをしながら駆け寄った。「東京Vが勝つことだけを考えてた」。C大阪からのレンタル期間が17日で満了となり、この日復帰を発表。五輪代表入りを実現させてくれたクラブへ感謝の気持ちがあふれ出た。

 短いレンタル期間で多くを学んだ。C大阪には清武(ニュルンベルクへ移籍)、山口、扇原が所属し、五輪代表選出は1クラブ3人までが原則のため、3月28日から移籍。元日本代表の東京V秋田コーチは杉本を「すべてが規格外。問題はその良さに自分が気が付いていないこと」という。運動量や相手DFの裏を突くタイミングを徹底された。

 自信になる結果が必要だった。11日の壮行試合ニュージーランド戦(国立)では五輪代表として初ゴール。そしてこの日の惜別ゴール。それでも「まだまだ足りない。数字にこだわりたい」と満足しない。

 試合前にはバックスタンドの観客が人文字で背番号の「41」を描いた。スタジアムから空港へ向かう駐車場でも「健勇コール」を受け、強く背中を押された。唯一J2から選出のストライカーの勢いが日本の武器になる。【今井貴久】