<J1:大分0-1横浜>◇第30節◇27日◇大銀ド

 名実ともに「ミスターマリノス」の誕生だ。横浜は前半45分、MF中村俊輔(35)が決めた直接FKが決勝点。ペナルティーエリア手前右からの一振りは、蹴る寸前、ゴール前左に立つGK清水の動きを見逃さなかった。「助走したら(GKが)少しだけ前に出たから、ニアに行こうと。ハーフタイムになりそうだったし、割り切って蹴った」。鋭く曲がったボールはゴール右に吸い込まれた。

 リーグで約半年ぶりのFK弾は、J1通算17点目。遠藤(G大阪)を抜き歴代単独1位だ。クラブ歴代の公式戦得点数も元日本代表FW城彰二氏を抜き、通算70点でトップ。シーズン10得点到達も、欧州リーグ時代を含め自身初となった。記録ずくめの一撃に「光栄です。長くやってると良いことがあるな」と笑顔をみせた。

 伝家の宝刀は、試合前日の日課となっている「FK対決」で磨いている。MF中町、DF天野らと蹴る本数を決めて順番に蹴り、最も多く決めた選手がジュースやコーヒーをプレゼントされる。中村は常に勝者だが、練習用の壁の設置やボール運びなどを率先して行い、仲間が蹴る姿もしっかり目に焼き付けている。

 くしくも、この日は城氏が試合前の会場にイベントで訪れていた。開始前に会場を離れたため、中村は先輩の前での新記録樹立とはならなかったものの、1日で首位を奪い返す一撃で9年ぶりのリーグ優勝を引き寄せた。日本が誇るフリーキッカーが、栄冠へ突き進む。【由本裕貴】