J2札幌が来季、ベトナムでの1次合宿を検討していることが28日、分かった。クラブでは今季からベトナム1部ドンタム・ロンアンとクラブ間提携しており、その本拠地ロンアン省が有力候補地。ベトナム代表FWレ・コン・ビン(27)の残留が濃厚で、チーム強化と同時にビンの“凱旋(がいせん)合宿”で、ベトナムでの認知度アップにもつなげる。決定すれば同国での実施はJ初となる。

 14年札幌はベトナムでスタートを切る。今季はドンタム・ロンアンとのクラブ間提携に始まり“英雄”ビンも獲得した。さらに11月3日の千葉戦からは現地企業で初めて「SSSC」が、広告看板を設置することも決定。クラブでは、ベトナム進出プラン第4弾として、今度は現地合宿の検討を開始した。ビンの来季契約条件が正式にまとまり次第、本格的に日程、場所などの調整に入る。

 2年ぶりの海外合宿は多くのメリットを秘めている。まずは、国内より格段に温暖な気候にある。昨季は緊縮財政のためグアムから撤退した。始動の1月中旬から2週間は札幌市内の屋内施設での調整となり、寒さで体作りに十分な負荷をかけられなかった。

 今回の候補地ロンアンのあるベトナム南部は熱帯性モンスーン気候で、年間を通じ平均気温が25度から30度と暖かく、フィジカル強化には最適の環境だ。4週間1回に短縮された今季の熊本合宿とは一変し、1次のベトナムで土台作り、2次の熊本で熟成と、しっかり時間をかけてチーム強化を図ることができる。

 財政的にも、グアムや国内で合宿を行うより滞在費などの面でコストダウンが可能になると試算している。1月に現地視察した三上大勝GM(42)は東南アジアでのキャンプについて「気候や費用、対戦相手など、とても魅力を感じた」と話していた。今季は隣国タイで名古屋などが合宿を行っており、地元クラブだけでなく、調整次第でJクラブとの対戦も可能になる。

 札幌は今季から北海道観光大使に任命された。スーパースターのビンが帰国して合宿するとなれば、ベトナム国内での注目度は上がり、道や札幌市のPRだけでなく、両国の観光客増にも結びつく。スポンサー企業にとっても、東南アジアでの認知度を高める絶好の機会。強化、財政、PRと、複数のプラス効果が期待できる試みとなりそうだ。

 ◆Jクラブの東南アジアキャンプ

 今季開幕前の2月に、J1名古屋、磐田、湘南とJ2のG大阪の4クラブがタイでキャンプを行った。名古屋は合宿中に現地クラブと親善試合を実施。Jリーグがタイ、ベトナム、ミャンマー、カンボジア、シンガポールの5カ国とパートナーシップ提携を結んだことで、各クラブが東南アジアとの連携を深めている。現時点ではタイとのかかわりが多く、ベトナムでキャンプをしたJクラブはない。