<J2:G大阪4-0熊本>◇第39節◇3日◇万博

 G大阪の長谷川健太監督(48)が、公約通り1年でのJ1昇格を達成した。今季から就任し、一時は「常勝クラブ」と呼ばれながら崩壊した西の名門を立て直した。クラブ側は来季も指揮を任せる方針で、近日中に正式に続投要請をする。梶居勝志強化本部長は「この(今季培った)基盤を長く積み上げていきたい」と明言。長期政権を任される可能性も出てきた。

 就任1年目の健太監督が、名門復活への足がかりを作った。J1昇格が秒読みに入った雨の本拠地万博。そこで見せたのは、08年にG大阪がアジアの頂点に立った時に見せたような「超攻撃サッカー」だった。遠藤が、宇佐美が、次々と相手ゴールを襲う。前節徳島戦から2試合で計9ゴール。重圧は一切見せず、青く染まったサポーターへ「強いガンバ」を披露した。

 「目標の1つであるJ1昇格を決めることができたのは、ホームだけでなく敵地にも多くのサポーターが来て応援してくれたおかげ。リーグ戦はまだ続いていますので1戦1戦、しっかり準備をして優勝を目指して残り3試合を戦う」

 苦難の道のりだった。一昨年まで10年に渡る西野政権で常勝クラブと呼ばれたチームは、昨季にもろくも崩壊した。クラブ史上初のJ2降格。ちょうど1年前、就任要請を受けた際には悩みに悩んだという。家族を残し、単身で大阪に来たのは「必ず1年で再建する」という覚悟の現れ。それでもJ2史上最強布陣を擁しながら、5月のゴールデンウイーク(GW)までの序盤13試合は、6勝6分け1敗と勝ち越せず。慣れない手つきでフライパンを握り1人、自炊する毎日。自然と酒の量が増えた。

 頑固なまでに自らのスタイルを貫いた。J1清水を率いた6年間を礎に、何度もミーティングを繰り返して崩壊した守備陣を再建した。クラブ側はその手腕を評価。梶居強化本部長は「若手が成長し、結果も残し、チームコンセプトを浸透させてくれた。(監督を)切る理由がない」と明かし、近日中に続投要請をする。また同強化本部長は「この(今季培った)基盤を長く積み上げていきたい」と語り、長期政権も視野に入れていることを示唆。12年末まで10年間指揮を執った西野体制のように、全面的にバックアップする。

 万博敷地内に建設予定のサッカー専用スタジアムは、年内に本格着工する見通しで、15年秋には完成する。今オフには得点力ある新助っ人など、今季を土台にして的確な補強も進める方針だ。J1制覇、さらには再びアジアの頂点へ。「健太ガンバ」が、黄金時代到来への扉を開いた。【益子浩一】

 ◆長谷川健太(はせがわ・けんた)1965年(昭40)9月25日、静岡県生まれ。現役時代は主に清水で活躍、日本代表FWとして93年W杯予選「ドーハの悲劇」も経験。J1監督は清水で05~10年まで6季務めて通算89勝53分け62敗で最高は06、07年の5位。13年G大阪監督に就任。

 ◆ガンバ大阪

 1980年に松下電器サッカー部として創部し、奈良県社会人リーグ2部に加盟。86年に日本リーグ1部へ昇格、90年度に天皇杯を初制覇した。91年にJリーグ正会員となり、92年にパナソニックガンバ大阪に改称、93年J元年から参入。J加盟後の主な国内タイトルは、リーグ制覇1度(05年)、ナビスコ杯制覇1度(07年)、天皇杯制覇2度(08、09年度)。08年にはACL初制覇しクラブW杯に出場。準決勝で欧州王者のマンチェスターUと3-5の激闘を演じ、アジア屈指の強豪と呼ばれた。ホームタウンは大阪府吹田市、茨木市、高槻市、豊中市。本拠地は万博記念競技場。