<J1:鳥栖1-0柏>◇第12節◇6日◇ベアスタ

 J1昇格3年目の鳥栖が柏を1-0で下し、勝ち点24の暫定ながら、単独首位に浮上した。W杯代表メンバー入りを目指すエースFW豊田陽平(29)はシュート2本で3戦連続無得点に終わったが、相手のマークを引きつける「おとり戦術」で決勝点をお膳立て。「ウリの1つ」という前線からの積極的な守備でも勝利に貢献した。

 FW豊田が「黒子役」で鳥栖の2連勝、首位浮上に貢献した。前半5分、豊田の徹底マークでぽっかり空いた前線のスペースに抜けたMF早坂が「トヨ(豊田)につられてスペースが空いた」と縦パスを冷静に決めて先制した。

 豊田は「守備は日本代表の他のセンターFWにはないところ。ウリの1つでもあり、チームのために意識した。守備の日だった」。激しい前線からのプレスで柏の攻撃の芽を摘んだ。

 3戦不発に終わったが、チームのため、試合中に左まぶたの上から流血するほど執念を燃やした一戦だった。暫定ながら単独首位に浮上した。ACLで1試合少ない広島とは勝ち点3差。得失点でも上回り、堂々の首位と言っていい。今季は開幕節、第2節に首位に立っているが、シーズン中盤に首位に立つのはクラブ史上初だ。W杯のためには得点がほしかったが、豊田は「チームが負けて得点しても、何か違う」と強調した。

 ストライカーとしての課題も分かっている。柏戦を控えた5日の最終調整。約1時間、得点感覚を取り戻すため、基本動作などを確認するようにみっちり鍛えた。

 そんなエースに期待するからこそ、元韓国代表MFの尹晶煥監督も「ミスも多くストライカーの質が落ちている。W杯に行きたいのか、行きたくないのか分からない」とあえて厳しい言葉を重ねる。10日の横浜戦は、12日発表のW杯メンバー入りへ最後の試合になる。「得点がいいアピールになるので、次にゴールを狙う」。最後まで、ブラジル切符はあきらめない。【菊川光一】