<J1:浦和2-1徳島>◇第27節◇5日◇埼玉

 首位浦和が、最下位徳島を下した。台風18号の影響による大雨で、ピッチに水が浮くコンディションの中、理想とするパスサッカーを捨ててロングパスを主体に攻め切った。先制を許したが、前半41分にMF柏木陽介(26)が直接FKを決め、後半18分には柏木のFKをFW李忠成(28)がつなぎ、DF那須大亮(32)が勝ち越し弾。前節まで2位の鹿島、3位の川崎Fが敗れ、2位以下との勝ち点差は再び今季最大の「7」に開いた。

 泥んこサッカーを制した浦和が、白星をもぎ取った。埼玉スタジアムは所々に大きな水たまりができ、ゴロのパスはほとんどつながらない状態。試合前、ピッチを確認したペトロビッチ監督は「このチームに就任してから初めて『ボールを持ったらとにかく前にロングパスだ』と指示した」と明かした。

 雨の影響を最小限にするため、相手との蹴り合いに挑んだ。指揮官からの指示に加え、GK西川は「バックパスは禁止にしていた」と守備陣で取り決め、リスクを最小限に抑えていた。

 午後2時の試合開始までに、3時間で23ミリの雨が降った。普段は水はけのいいスタジアムも短時間の強雨で水がたまった。田んぼのようなピッチでは、GKからパスをつなぐ浦和のサッカーができないのは明らかだった。徳島の小林監督も「グラウンドに入った時に、我々にプラスだと思った」とほくそ笑んだという。

 前半、徳島に先制を許したが、MF柏木が直接FKを決めて流れを変えた。さらに後半18分に柏木からの浮き球のFKを、李が胸でつなぎ那須がボレーシュートを決め逆転。李は「トラップして下に落としたら、ピッチが悪いだけにどうなるか分からなかった」と意図的に胸で浮かせていた。柏木も2点目について「曲げたら飛ばないと思ったから、ストレートのボールを蹴った」。浦和の2得点はともに、ピッチにバウンドせずに決めたものだった。

 さらに西川が自陣からFKを蹴る時は、那須が「少しでも蹴りやすくなれば」と、手で芝の水をさらってボールをセット。自分たちのサッカーを捨てる大胆さと、雨の影響を最小限にする繊細さ。首位と最下位の対戦は当然の結果に終わったが、細部に宿っていた勝利の女神を引き寄せたのは、浦和だった。【高橋悟史】