<天皇杯:G大阪3-1山形>◇決勝◇13日◇日産ス

 J2山形はチーム初の天皇杯制覇を逃した。東北勢として81年ぶりの決勝に駒を進めたが、J1王者G大阪に敗れた。初タイトル獲得はならなかったが、後半17分にMFロメロ・フランク(27)のゴールで一時1点差に詰め寄るなど持ち味を発揮。運動量を生かした全員サッカーを最後まで貫いた。

 山形が日本一を目前にして力尽きた。2点を追うロスタイム。GK山岸のゴールキック直後に無情の笛が鳴り響く。守護神として最後まで諦めない姿勢を示した山岸は、試合後まで「負けて下を向くのではなく、最後まで堂々とG大阪の表彰を見よう。この悔しさを忘れないようにしよう」と仲間を鼓舞し続けた。

 格上の相手に真っ向勝負を挑んだ。開始から全員が運動量を生かした持ち前のハードワークを実践。何度も相手ゴールを脅かした。前半4分と同22分、警戒していたはずの相手2トップの前に連続失点したが、戦う姿勢は失わなかった。高い位置からプレスをかける、自分たちのサッカーを貫いた。

 後半17分、左からのクロスにMF松岡の右側を並走していたMFロメロ・フランクが左足で反応。ゴール右に反撃弾を決めた。フランクは「松岡さんがぎりぎりでスルーしてくれたので打つだけだった。よく見ていてくれた」。1点差に詰め寄り、下克上の期待は高まったが、後半37分にDF山田拓巳(25)が右足をつってピッチ外に。1人少ない数的不利の中で、相手に決定的な3点目を許し、力尽きた。

 選手たちは日本一こそ逃したが、今季J1復帰の目標をなし遂げた。FW山崎主将は「達成感のある1年だった。肌で実感できた」と充実感もみせた。石崎監督も「残念だが、これが今の実力」と完敗を認めた上で「勇気を持って戦えた。意義のある1年だった」と選手の頑張りを認めた。

 クラブ史上初の天皇杯ファイナルを戦った。選手たちはホーム以外では過去最高になる1万5000人以上のサポーターの前で、新たな歴史を刻んだ。シーズン終盤の快進撃を支えた山岸は「この記憶を薄れさせてはならない。この悔しさを忘れないことが、クラブの歩みにつながる」と前向きに話した。【佐々木雄高】