【アルホル(カタール)15日=磯綾乃】前回王者のフランスが準決勝でモロッコに2-0で勝利し、史上3カ国目の連覇へ王手をかけた。

フランスの怪物FWキリアン・エムバペ(23)が異次元のプレーを連発し、実質2アシストで貢献。18日(日本時間19日午前0時キックオフ)の決勝ではアルゼンチンと対戦する。悲願の初優勝を狙うアルゼンチンのエースはFWリオネル・メッシ(35)。エムバペとメッシ。パリ・サンジェルマンの同僚で大会得点王も争う2人が、最高の舞台で対決する。

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どれだけ包囲してもエムバペの破壊力は止められない。試合開始直後の前半5分。ペナルティーエリア内中央でパスを受けたフランスの怪物を、5人の屈強なモロッコDFが取り囲んだ。さらに1人、2人と急いで集結したが、お構いなし。伸びてくる足をかわし豪快に放ったシュートが、先制ゴールにつながった。

「BACK TO BACK WORLD CUP FINAL(2大会連続のW杯決勝)」。試合後、しばらくして興奮の言葉とともにエムバペがインスタグラムに投稿したのは、5人のDFに囲まれながら左足を振り抜いた瞬間の写真。すぐに“お披露目”したくなるほど、会心のプレーだったようだ。

「決勝に進むことができて誇りに思う。チームの質、経験、精神力を証明した」。そう誇るデシャン監督は後半20分にFWチュラムを投入した。これも「キリアン(エムバペ)のエネルギーを残すため」。中央に移ったエースは、再び期待に応えた。同34分、チュラムとのパス交換からペナルティーエリア内に入り込むと、DF4人をひきつけた。こぼれ球がFWコロムアニへの絶妙な“ラストパス”になった。異次元のプレーで全2点に絡んだ。後半、左サイドをスピードでぶち抜いたプレーを含め、個人技、存在ともに圧倒的だった。

試合後、歓喜に沸くスタンドに駆け寄ったエムバペは見慣れた青ではなく、相手の赤いユニホームを着ていた。パリSGの仲間で親友のモロッコDFハキミのもの。勝敗が決まった後のピッチで2人は抱き合い、互いをたたえ合う姿があった。1次リーグでは一切取材に応じず、その後「(沈黙は)集中したい時の自分流のやり方。目標は優勝だけ」と話すなど強気な言葉が注目されたが、一面にすぎない。23歳の逸材は想像を超えるプレーと屈託のない笑顔で、世界中のファンをひきつけている。

イタリア、ブラジルに続く史上3カ国目のW杯連覇の偉業まであと1勝。立ちはだかるのは、圧倒的な実績を誇るスター、メッシだ。パリSGの同僚でもある最強の2人が、世界最高の舞台でぶつかり合う。ここまで、ともに5ゴールを挙げ首位に並ぶ、得点王争いも熾烈(しれつ)だ。進化を続ける若き怪物か、5度目の挑戦にかけるスターか-。タイトルと優勝トロフィーの行方は、究極の頂上決戦で決まる。