今回のコラムはフットボール(サッカー)ではなく、アメリカンフットボールの記者会見での話題から。

 米アメフトNFLの“決勝戦”スーパーボウルが4日(日本時間5日)、ミネソタ州ミネアポリスのUSバンク・スタジアムで行われる。今年はニューイングランド・ペイトリオッツ(AFC)とフィラデルフィア・イーグルス(NFC)の対戦だ。

 1日に行われたペイトリオッツ・ベリチック監督の記者会見で一瞬、会場に嫌な空気が流れる場面があった。ESPN電子版など複数の米メディアが報じている。

 同電子版によると、会見に参加したアルゼンチン人のジャーナリストがあくまで丁寧な口調でこう聞いたという。「世界最高のQBであるトム・ブレイディ(ペイトリオッツ)と、世界最高のサッカー選手であるメッシ(バルセロナ)を比較してみていただけませんか?」。

 その記者はベリチック監督から母国の英雄について「トムもメッシのような視野の広さを持っているし、肩が強くてパスも正確だ。どちらがアスリートとして上か比較するのは難しいよ」くらいのリップサービスをもらおうと思っていたのかもしれない。

 しかし同監督は仏頂面のまま「トム以外に自分のチームでプレーしてほしいQBはいない」とだけ答えて、次の質問に移ってしまった。

 もしかしたらベリチック監督はメッシのことを知らず、単純に別のQBのことを聞かれたと思い、そう答えたのかもしれない。はたまた、サッカー選手との比較を「バカバカしい」と感じ、質問を一蹴したのかもしれない。

 真相は分からないが、シャレの通じない同監督の「classic response(らしい答え)」(USAトゥデー電子版)に、会場が凍り付いたのは想像に難くない。

 ここまで突拍子もない質問ではないが、筆者を含めた日本人記者も欧州サッカーや野球の大リーグなど“世界の舞台”で空気を読まない質問をしてしまうことが多々ある。

 日本メディアだからしょうがない部分はあるが、まるで活躍をしていない日本人選手について毎日のように質問したり、だれかとの比較を求めたり…。このアルゼンチン人記者の報道を見て、自分の過去の取材を思い出し、ちょっと顔が赤くなってしまった。

【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)