イングランド勢同士の対決となった今季欧州チャンピオンズリーグ(CL)決勝は、チェルシーが1-0でマンチェスター・シティーを下し、9季ぶり2度目の優勝を飾った。

筆者が思い出したのはチェルシーが11-12年シーズンの欧州CLで初優勝し、12年暮れにクラブW杯のために来日した時のこと。横浜の練習場で、当時現役だったイングランド代表MFランパードに「取材させてもらっていいですか?」と声をかけると、「ゴメン、もう移動しないといけないんだ」とやさしく肩をたたかれた。

あのとても感じが良かったランパードが、今年1月にチェルシーの指揮官を解任された時は少し悲しかったが、チームは新任のトゥヘル監督のもと大変身。攻守にスキのない好チームに生まれ変わり、再び欧州の頂点に立った。12年に取材したこともあり、少しだけチェルシーに肩入れしながらテレビで試合を見ていた筆者も、彼らの優勝をうれしく思った。

同様に、異国の地から手に汗を握りながらCL決勝を観戦していた男がいた。元ドイツ代表MFミヒャエル・バラック氏(44)。レーバークーゼンやバイエルン・ミュンヘンなどで活躍し、チェルシーには06年から4シーズン所属した。09-10年シーズンにプレミアリーグを制し、FA杯では3度優勝を飾った。

そのバラック氏が、どうしたことかパーティー文化で有名なスペイン・イビサ島のキャバレーで、自身のスマホで試合を観戦している姿が、複数の英メディアで報じられた。バラック氏の目の前では、セクシーな衣装の2人の女性がダンスを繰り広げていたが、同氏は完全に無視。一瞬たりともそちらに目を向けることなく、真剣な表情で試合に見入った。チェルシーの勝利が決まると、ようやくリラックスした表情に戻り、パーティーを楽しんだという。

バラック氏ほどの大物OBであれば、現地ポルトで決勝を観戦することもたやすかったに違いない。ただ素晴らしいキャリアを誇る同氏には、最後の1戦(1節)で優勝を逃した経験が何度かある。レーバークーゼン時代の01-02年シーズンには最終節でドルトムントに優勝を譲り、同じシーズンのドイツ杯決勝ではシャルケに敗れた。同シーズンの欧州CL決勝でもレアル・マドリードのラウル、ジダンにゴールを決められて1-2で惜敗した。

02年ワールドカップ(W杯)日韓大会では出場停止のために決勝でプレーできず、ドイツはブラジルに0-2で敗れた。チェルシーに所属していた07-08年シーズンも、最終節でマンチェスター・ユナイテッドに優勝をさらわれた。何より、クラブとして初進出した同シーズンの欧州CL決勝でマンチェスターUに1-1からのPK戦で敗れている。

そんな過去があるから、バラック氏はあえてチェルシーに近づかず、遠くから古巣に声援を送っていたのかもしれない。または単純にリゾート地でパーティーを楽しみたかっただけかもしれないが…。いずれにしてもOBとしてチェルシーの欧州制覇を心から喜んでいたことは間違いなさそうだ。【千葉修宏】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「海外サッカーよもやま話」)