西アフリカ・リベリアの大統領選決選投票で、選挙管理委員会は28日、開票率98・1%での得票率を発表し、61・5%を得たサッカーの元スター選手で野党候補のジョージ・ウェア氏(51)の勝利が確実となった。ウェア氏は90年代にイタリアのプロリーグ・セリエAの名門、ACミランなどで活躍。95年にはアフリカ人選手初のバロンドール(欧州最優秀選手賞)にも選ばれた「リベリアの怪人」が、政治家の頂点に立った。
驚異的な身体能力から数々の名プレーを生み出した国民的ヒーローが、一国の大統領の座を射止めた。リベリアは世界の最貧国の1つで、昨年6月まで2年以上にわたり流行したエボラ出血熱で、医療体制が崩壊。ウェア氏は貧困解消などを訴え、若者を中心に支持された。与党のジョセフ・ボアカイ副大統領(73)は38・5%だった。
ウェア氏は自身のツイッターで「リベリア人の皆さん、私は全国民の感情の高ぶりを感じます。今日(28日)手にした仕事の重要性や責任が分かったところです。改革を始めよう」と訴え、1万2000件以上の「いいね」を集めた。大統領選は、ノーベル平和賞受賞者エレン・サーリーフ大統領(79)の任期満了に伴い実施。内戦など政情不安が続いたリベリアで、民主的な政権交代は70年以上ぶりとなった。
ウェア氏はACミラン、パリサンジェルマン(フランス)、チェルシー(イングランド)など数々の名門チームを渡り歩いた。主にFWとして得点を量産。ミランでは95~00年の5シーズンで、114試合に出場し、46得点を挙げた。95年にはバロンドールのほか、FIFA世界年間最優秀選手賞も受賞した。サッカーW杯出場歴のないリベリアでは、英雄として知られた。
そのパリサンジェルマンは今夏、息子のティモシー・ウェア(17)とプロ契約を結んだ。08年には、福島県郡山市に発足したクラブチーム「バリエンテ郡山」(現在は消滅)の総監督に就任したこともあった。
前々回の05年大統領選にも出馬したが敗北、サーリーフ氏がアフリカ初の民選女性大統領として当選した。ウェア氏は隣国シエラレオネの内戦に加担し収監中のチャールズ・テーラー元大統領の元妻を副大統領候補に指名しており、テーラー氏の勢力の復権を懸念する声も上がっている。
◆ジョージ・ウェア(George Weah)1966年10月1日、リベリアの首都モンロビア生まれ。15歳で地元チームと契約し、プロ生活をスタート。87年にカメルーンでプレー、フランスのASモナコ、パリサンジェルマンを経てACミランへ。01年アラブ首長国連邦(UAE)アルジャジーラに移籍、03年引退。その後は米国の大学で政治学を学びながら、リベリア最大政党CDCの党首を務めた。