日本代表DF熊谷紗希(29)の所属するリヨン(フランス)が3-1でウォルフスブルク(ドイツ)を下し、5連覇を達成した。最多を更新する7度目の優勝。熊谷はボランチでフル出場し、1点リードの前半43分に豪快なミドルシュートを決め、アジア人として初めて決勝でゴールを挙げた選手となった。リヨンは新型コロナウイルスのため途中で打ち切られた国内リーグに加え、国内カップ戦も制しており、2季連続で「3冠」を達成した。

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女子サッカー界最高峰の舞台で熊谷が躍動した。1点リードの前半43分。ペナルティーエリア外でボールが自身の前にこぼれると、迷わず左足を振った。利き足とは逆ながら鋭いシュートがゴール右へ決まると、両拳を突き上げて喜びを爆発させた。3-1の快勝での優勝に貢献し、試合後は自身のSNSに「仲間に感謝。全てに感謝。応援本当にありがとうございました」と喜びをつづった。

世界屈指の強豪の中でも見劣りしないプレーで成長を続ける。13年にフランクフルトから加入し、今季で在籍7年目。日本代表ではセンターバックだが、チームでは欧米選手にはない器用さと献身性で主にボランチを任される。リヨンはフランス初の完全プロクラブで、各国代表選手がひしめく女子の欧州最強チーム。「日常がW杯みたいな状況」と語る環境の中で、今大会は16強から全試合先発フル出場するなど、主力として堂々と戦い抜いた。

欧州サッカー連盟によると、決勝での得点はアジア人史上初の快挙。15-16シーズンの女子CL決勝では最優秀選手にも輝き、19年W杯フランス大会ではコカ・コーラ社のプロモーション映像にアジア人選手で唯一出演するなど、その活躍は世界で認められている。

今年1月にはクラブとの契約を来年6月まで更新し「日本人の自分が、世界のトップレベルでできることを見せ続けられれば」と覚悟を口にしていた。日本代表としても11年の世界一を知り、現在は主将も務めるが、まだ29歳。満足することなく、これからも世界の最前線で戦い続ける。

◆熊谷紗希(くまがい・さき)1990年(平2)10月17日、札幌市生まれ。小学3年時にサッカーを始め、宮城・常盤木学園高2年時にA代表初選出。09年の筑波大進学と同時に浦和入り。11年にドイツ1部フランクフルトに移籍し、13年からリヨンに所属。18年11月のノルウェー戦で国際Aマッチ通算100試合出場を達成。家族は両親と兄。173センチ。血液型O

<女子欧州CL記録メモ>

▼日本人が決勝で得点 熊谷が日本人で初めて女子欧州CLの決勝でゴールを決めた。男子では11-12年にバイエルン・ミュンヘンに所属したFW宇佐美貴史がチェルシーとの決勝に日本人で初めてベンチ入りしたが出場機会はなかった。チームもPK戦で敗れて準優勝。10-11年のシャルケDF内田篤人は準決勝のマンチェスター・ユナイテッド戦で2試合ともにフル出場したが、2戦合計1-6で決勝進出を逃した。

▼5連覇 リヨンは15-16年から女子の欧州CL史上初の5連覇。男子ではレアル・マドリードが55-56年から欧州チャンピオンズカップ(前身大会)を5連覇している。

▼女子欧州チャンピオンズリーグ(CL) 欧州連盟(UEFA)加盟国の女子クラブNO・1を決める大会として01-02年にスタート。当初は女子欧州カップで、09-10年から女子欧州CLに名称変更。最多優勝はリヨンの7度。日本選手では09-10年にポツダム(ドイツ)でFW永里優季、11-12年にリヨンでFW大滝麻未、そして熊谷の3人が優勝を経験。今大会は新型コロナウイルスの影響で準々決勝を前に中断され、スペイン2都市での集中開催で8月21~30日に各試合一発勝負で行われた。