昨年9月に日本人初の100メートル9秒台を出した桐生祥秀(22=日本生命)は決勝で10秒16の3位どまり。アジア大会代表は絶望的になった。

 9秒98を出してから9カ月。日本一の大舞台で、最高の走りはできなかった。今季はこの日本選手権やジャカルタ・アジア大会(8月)に調子のピークを持ってこさせるため、スロー調整を実施。オフは200~250メートルの長い距離の練習が中心で後半の失速を抑えることに重点を置いた。その反動からか、今季は最高が10秒15と記録は低調。日本選手権決勝も、今季最高記録を超えられなかった。

 今春に東洋大を卒業。日本生命とは所属契約で、今季から実質プロとなった。練習場に到着すると、よく口にする。「これから仕事」。競技者として報酬をもらっている以上、求められるのは結果、インパクトを残すこと。学生時代にはなかった覚悟を持って臨んでいた。

 アジアのライバル中国は記録ラッシュが続く。19日に謝震業(24)が中国記録の9秒97を出すと、22日には蘇炳添(29)がアジア記録に並ぶ9秒91をマークした。アジア大会の100メートルの代表は絶望的になったが、日本が誇る最速スプリンターも負けてはいられない。