陸上男子100メートルの桐生祥秀(23=日本生命)がアジア選手権初優勝を飾った。決勝で10秒10(追い風1・5メートル)。この種目で日本勢のVも初めて。今季最大の目標となる秋の世界選手権の舞台にもなるハリファ競技場で、好印象を心に刻む、最高の“予行演習”となった。約2時間半前の準決勝は全体トップとなる10秒12(追い風1・4メートル)、前日21日の予選は10秒29(追い風0・9メートル)の1着。好調ぶりを示していた。

大舞台での勝負強さが課題だった。昨年は個人種目でジャカルタ・アジア大会の出場を逃していた。2年前の世界選手権も出場は400メートルリレーだけ。個人種目での出場を逃していた。16年リオデジャネイロ・オリンピック(五輪)も10秒23で代表3人中、唯一の予選落ちの屈辱を味わった。今まで取り組んでいなかった「メンタルトレーニング」も導入。自己記録9秒91を誇るアジア最強の男・蘇炳添(29=中国)が不在とはいえ、アジアナンバーワンを決める大会で結果を出した。日本人ただ1人の9秒台スプリンターの実力を発揮。自信を上積みできる大きな勝利となった。

今後へ向けた意義も大きい。これで国際陸連が導入した世界ランキングにおけるポイントが大きく加算される。世界選手権の男子100メートル代表選考に関して、日本陸連は参加標準記録(10秒10)を満たした日本選手権の優勝者以外は、事実上、同記録を満たした上で世界ランキングの上位順に選ぶと発表している。これで桐生は世界選手権代表入りへも大きく前進したことになる。また今大会で得たポイントは20年東京五輪にも有効だ。「アジア選手権チャンピオン」の肩書を得たことで、大きなレースへの出場もしやすくなる。未来が大きく開けてきた。

山県亮太(26=セイコー)は右太もも裏の違和感で棄権した。ケガではなく、次戦は予定通り木南記念(来月6日・ヤンマースタジアム長居)に出場する意向という。