【ドーハ=上田悠太】世界ランキング1位で表彰台を期待された戸辺直人(27=JAL)が力を示せなかった。

2メートル26は3回目にクリアしたが、2メートル29は失敗。試技数の差で上位12人による決勝進出は逃した。佐藤凌(25=東日印刷)も2メートル22、衛藤昂(28=味の素AGF)も2メートル17にとどまり、いずれも敗退だった。

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3回目の2メートル29のバーを落とすと、戸辺はマットにあおむけに倒れ込んだ。顔を覆った。メダルの自信を「60%、70%と思いたい」と語っていた舞台で、まさかの予選敗退。「何も考えられない」。結果を突き付けられ、2メートル35の日本記録保持者は、座って動けなかった。世界的に「低調」なレベルで、自らにもメダルのチャンスはあっただけに、悔しさも大きかった。

何があったのか。海外転戦を重ね、世界トップのメンバーと争ってきた。世界選手権も「気持ち的にプレッシャーを感じていることはなかった」と心は冷静だった。しかし、これが世界大会独特の“魔物”か-。体が違った。2メートル26は2度失敗。踏み切り位置が定まらなかった。3度目に成功も、3センチバーが上がると、いつもは1度成功すれば体に染み付く感覚が乱れた。

「1度崩れてしまったのを立て直しきれなかった」と悔いた。また試合の中の修正能力を生み出す「分析力がいつもより鈍っていたのかな」。冷静に敗因を見つめた。8月に踏み切り足の左かかとを痛め、完璧に試合勘を取り戻せていなかった可能性もある。

東京五輪で同じ失敗はできない。「本番で自己ベスト、シーズンベストを出せる調整力を磨かないと」。自分に言い聞かせるように口にした。