アテネ・オリンピック(五輪)金メダリストがたどった道をなぞり、超えた。東京五輪マラソン女子代表に内定している前田穂南(23=天満屋)が、女子30キロ日本記録となる1時間38分35秒で圧勝した。

2005年ベルリンマラソン(30キロ通過地点)で野口みずきがマークした1時間38分49秒を更新。その野口が04年アテネ五輪で優勝した年に刻んだ大会記録も塗り替えた。

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起伏に富んだ難コースで、前田は高速かつ精密なラップを刻んだ。男子選手に囲まれる形で序盤から女子トップに立ち、最初の5キロを16分18秒で入ると、続く5キロも同じく16分18秒。上り勾配が多い10~15キロは、それまでよりちょうど30秒遅い16分48秒で我慢し、15キロ付近で折り返すとペースを戻した。

20キロ過ぎで少し緩めて力を蓄え、最後の5キロはこの日最速の16分12秒をマーク。タフなコースを乗り切って日本記録をたたき出した。「30キロは長かったようで短かった」と振り返り、「1時間39分を切ることを目標に走っていた。達成できて良かった」。1時間38分35秒の快走に充実感を漂わせた。

04年に野口みずきがマークした大会記録(1時間39分9秒)更新で、200万円のボーナスも獲得した。意識したのはそのアテネ五輪金メダリストの足跡だ。野口はこの大会での快勝を足がかりに、同年夏の五輪で頂点をつかんだ。武冨監督は「アテネの前の野口さんはどうしていたか参考にし、昨年末ぐらいにこのレース出走を決めた」と明かし、「野口さんがこの大会で出したタイムを1つの目標にして、そこまで行けた。このあとの目標を少し高く持てる」と目を細めた。

今後の予定について武冨監督は「どのレースに出るかは何も考えていない。どこかで1本入れたいが、まずはしっかり練習をやることが大事」と話すにとどめた。具体的なプランが決まるのはこの先とはいえ、この日最高の結果を出したことで、視界は大きく広がった。前田は「野口みずきさんと同じ流れに乗れた。いいモチベーションになる」。偉大な先達がつくった道筋をたどりながら、金メダルへと近づいていく。【奥岡幹浩】

▽女子30キロ(1)前田穂南(天満屋)1時間38分35秒=日本新(2)野添佑莉(三井住友海上)1時間46分19秒(3)森田詩織(パナソニック)1時間48分39秒

◆04年の野口みずき アテネ五輪を制した04年の野口は、1月に宮崎女子ロード・ハーフマラソンを大会記録で制し、2月の青梅マラソンを当時の女子30キロ日本記録で優勝。同月末にはクロスカントリーレースにゲスト参加(記録なし)し3キロを快走した。4月に熊本合宿を行い、同月下旬には兵庫リレーカーニバルの1万メートルで4位に入って自己ベストをマーク。5月下旬から中国の高地合宿で走り込み、7月上旬にアテネで五輪コースを試走。その後は約1カ月間スイスで合宿を行い、本番に備えた。

◆東京五輪マラソン代表の現在 女子MGC2位の鈴木亜由子(日本郵政グループ)は右脚太もも裏の肉離れのため、16日の熊日30キロロードレースを欠場した。男子MGC1位の中村匠吾(富士通)は米アルバカーキで合宿中で、次戦は3月29日の世界ハーフマラソン選手権(ポーランド)の予定。同2位の服部勇馬(トヨタ自動車)は左脚の肉離れの影響で、1月19日の全国都道府県対抗男子駅伝に続いて今月2日の丸亀国際ハーフマラソンも欠場した。