7人まとめて、ぶっちぎった。七十七銀行の青木益未(26)が13秒02(向かい風0・1メートル)の自己新で2年ぶり2度目の優勝。昨年は2位だったが、痛烈に“倍返し”を決めた。

序盤で一気にリードを作った。もう中盤には“お・し・ま・い・DEATH”とばかりに、レースを支配していた。12秒97の日本記録保持者で、2位だった寺田明日香(30=パソナグループ)に0秒12差の圧勝。大会タイ記録で、自己記録を0秒06更新した。

アスリートとしての活動費を“出資”してもらっている七十七銀行に出勤した時は「事務センター」で、為替レートの数字を打ち込む作業などを担う。その“バンカー”は「すごく緊張したが、自分のレーンだけ見て走れた」と振り返った。

コロナ禍によって、練習拠点「ナショナルトレーニングセンタ-」(東京・北区)に“業務停止命令”が出た時には、仙台の寮へ。トレーニングルームや、危なくない道路で走った。冬に培った力を維持できるよう心掛けた。

このオフから男子の日本記録を持つ高山峻野(26=ゼンリン)のもとに“出向”して強くなった。“土下座”でも、“おねしゃす”でもなく、丁寧に「お願いします」と頼み込み、一緒に練習をするように。“助太刀”してくれた高山や金子コーチらの“再建案”によって、技術や得意の加速を見直した。8月には2・1メートルの追い風参考記録ながら、12秒87をマーク。今季は「青木株」が急上昇中だ。”陸上界での立ち位置も“出世”した。

施されたら、施し返す-。レース後には、支えてくれた所属先、金子コーチ、高山らに“感謝”を述べた。「練習環境が変わって、こんなにいい形でシーズンを終えられた。感謝しています」。支えてくれた人に“恩返し”になる結果を出した。

東京オリンピック(五輪)の参加標準記録は12秒84。半沢直樹よろしく“難題”を突き付けられている。それでも、ドラマ「半沢直樹」は欠かさず、見ていた、18年ジャカルタ・アジア大会代表は「寺田さん、木村(文子)さんと競っていけば、出せる記録だと思う。しっかり練習から意識して、(記録を)狙える位置にいると自信を持って頑張りたい」と力を込めた。

仲間と一丸となって、痛快に乗り越えていく。代表になれないなんて“断固拒否”だ。【上田悠太】