全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)は来月1日、前橋市の群馬県庁前を発着点とする7区間(100キロ)で行われる。5連覇を狙う旭化成、マラソン東京五輪代表の中村匠吾(28)を擁する富士通、同じく東京五輪代表の服部勇馬(27)がエースのトヨタ自動車が3強と言われている。富士通は日本選手権5000メートルでも坂東悠汰(24)と松枝博輝(27)が1、2位を占めるなど、中村以外にも五輪代表を狙う選手がそろう。高橋健一駅伝監督は「旭化成の連勝を止めたい」と意気込んでいる。

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中村はチームのため、自身の五輪マラソンのため、強い決意でニューイヤー駅伝に臨む。

「目標は優勝です。そのために区間賞を狙ってチームに貢献する走りをしたい。大事な区間を走ると思うので、他チームのエースとの勝負に勝ってチームに流れをたぐり寄せたい」

1年前の東日本実業団駅伝では6区を走った大森澪(25)がレース途中に故障して失速。タスキはつないだものの富士通は17位に終わってニューイヤー駅伝への連続出場は29回で途切れた。しかしチームはこのレース後に駅伝に対する気持ちを新たにして練習に取り組み、今年の東日本予選をトップで通過した。

中村が走る「大事な区間」は、現時点では4区(22.4キロ)になる可能性が高い。

富士通の1区(12.3キロ)と3区(13.6キロ)は坂東と松枝、東日本実業団駅伝1区区間賞の浦野雄平(23)の3人が候補。2区(8.3キロ)のベナード・キメリは世界ハーフマラソン選手権9位。1~3区はスピードも、今季の実績も十分の選手がそろっている。

後半区間の5~7区には坂東、松枝、浦野の3人のうちの1人、さらには鈴木健吾(25)と塩尻和也(24)が登場しそうだ。

鈴木は神奈川大3年時の17年箱根駅伝2区区間賞を獲得。昨年のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)にも出場した実力者で、今季も1万メートルを27分49秒16で走り、富士通日本人最高タイムをマークしている。また塩尻は順大4年時の19年に箱根駅伝2区を走り、日本人最高記録(当時)を更新した。個人種目では3000メートル障害が専門で16年リオ五輪、18年アジア大会、19年世界陸上と代表入りした実績を持つ。

富士通は4区で先頭争いに加われば、5区以降で勝ちきる力が十分にある。

中村は駒大4年時の15年箱根駅伝1区で区間賞を獲得するなど学生駅伝では大活躍したが、ニューイヤー駅伝ではこれまで区間上位がない。19年大会の4区では3人を抜いてチームを2位に浮上させたが、区間賞の井上大仁(28=三菱重工)に並ばれたとき、「自分のリズムで走れなかった」ために区間9位に終わった。

「そのときより力はついています。4区なら前半から積極的に走りながら、終盤の向かい風のところでもペースを上げていくことが課題です」

前半から速いペースで入ることを意識しているのは、マラソンの高速化への対応も考えてのことだ。東京五輪も札幌開催となり、天候次第ではハイペースの争いになる可能性もある。

19年9月のMGCで優勝したときのように、中村が4区の終盤で先頭争いから抜け出せば、富士通が優勝に大きく近づく。そして東京五輪のマラソンに向けて、中村自身が自信を持つことができる。