青森から遠く離れた九州で、大輪の花を咲かせる。全国高校総体陸上女子ハンマー投げで優勝し、日本選手権3位の弘前実・村上来花(らいか、3年)が今春、九州共立大(福岡)に進学する。2年秋に高校女子で初となる60メートル台のロングスローを放つと、3年春は自身が持つU-18、U-20、高校の各記録を塗り替える62メートル88をマークした。高校3年間で大きく成長を遂げた18歳が、日本記録更新、オリンピック(五輪)出場の大きな夢に向かって挑戦する。

入学から目標にしていた「高校日本一」を昨夏実現した村上が、雪が降る弘前市で卒業後の飛躍を誓った。「日本記録(67メートル77)は目標に。オリンピックは夢にしたいです。(今後は)大きな目標と夢につながる小さな目標を自分なりに計画して、自分に負けない選手になりたいです」。競技歴は約3年で日本歴代6位の記録を誇り、成長曲線を歩み始めたばかりの逸材が、胸を膨らませた。

始まりは1年生の19年5月だった。入学後から本格的にハンマー投げを始め、初出場した県総体で県高校記録を超える大会新記録で優勝した。「まさか投てきで県の高校記録とかを保持してしまうとは…。新鮮な気持ちでした」。試合を重ねるごとに飛距離を伸ばし、2年生の時に初出場した日本選手権で5位に入賞。そのわずか2日後の10月4日に行われた東北高校新人陸上で初めて60メートルの壁を越える61メートル02をマーク。集大成の最終学年につなげた。

同世代に敵なし-。日本トップクラスの好成績を残したことで重圧もある中、常に上を見続けた。「2年生の8月に58メートル台で世界ジュニア(U-20世界選手権)の派遣標準記録を突破して。海外で戦うためにはという思いが芽生えました」。以前は与えられた練習メニューをこなすだけだったが意識改革。「この大会に出たいから、どういう練習をすればいいのかと考えるように変わりました」。現状に満足せず、冬季は雪でハンマーが投げられないハンディがあっても、高い向上心を持ち続けた。

卒業後は福岡での生活が始まる。「ホームシックになるんじゃないかなという不安がありますね」と笑ったが、縁のある土地だ。20年2月と昨年4月。九州共立大での記録会で当時の自己ベストを更新した。「高校1年生の時からお世話になり、結果を残すことができました。環境はすごく整っていると思いますし、競技を続けやすい環境だと思うので」と進学の決め手を明かした。

21年の目標は「世界で通用する選手になる!!」。同4月にはその通りに、世界ジュニア(ケニア・ナイロビ)への挑戦権を得たが、コロナ禍で派遣が見送られ参戦ならず。22年の新天地での目標は「素直に!!パワフルスマイル」に決めた。

村上 自分が素直にならない限り、競技している自分に向き合えないと思います。自分の持ち味は笑顔。つらいときも絶対に楽しい部分はあると思うので、笑顔でいれば楽しい気持ちになると思うので書きました。

1センチ、1メートルずつ-。新天地でも才能を開花させ、夢に近づくロングスローを放つ。【相沢孔志】

◆村上来花(むらかみ・らいか)2004年(平16)1月13日生まれ、青森・弘前市出身。弘前一中1年時に陸上競技(短距離)を始め、弘前実で本格的にハンマー投げを始める。1年は全国高校総体11位。高校1年歴代1位の52メートル91をマーク。2年で日本選手権5位入賞。自己ベストは62メートル88。164・5センチ。家族は両親、兄、姉、祖母。座右の銘は「負けないことより逃げないこと」。