アスリートたちが入社式で決意を新たにした。陸上女子で東京五輪1500メートル8位の田中希実(22)は1日、新社会人の一歩を踏み出した。同日付で入社する愛知・刈谷市の豊田自動織機で行われた会見に出席。3種目の日本記録保持者は、5000メートルの記録更新を視野に入れた。7月には米オレゴン州で世界選手権が開催。24年パリ五輪を見据え、800メートルから1万メートルまで今季も幅広い種目での活躍を期す。

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自身を含めた371人の“同期”との入社式を終えた田中は、引き締まった表情で新年度の意気込みを語った。「サポートしていただいてくれている分、しっかり結果も出さないといけない責任感、緊張、プレッシャーも今は感じている」。拠点は今後も変わらず兵庫県内が中心。同志社大時代から同社のトラッククラブに所属した縁もあり、入社を決断したという。

昨季は階段を上った実感がある。東京五輪では日本人初の1500メートル入賞。1000メートル、1500メートル、3000メートルの日本記録保持者として周囲の見る目も変わった。「自分が挑戦者でいることがかなり難しくなってきている。ここからしっかりとした世界での地位を築く上での正念場。変なおごりに負けないように、ワクワク感をしっかり持って走れればいい」。慢心は一切見当たらない。

新社会人としての抱負も色紙に記した。「流れにまかせる」。着想を得たのはヘルマン・ヘッセ著の「シッダールタ」。読書家の22歳は、セルビアで行われた3月の世界室内選手権を終えて、帰路の飛行機で同書を読み進めた。「意固地になりすぎるんじゃなくて、流れに任せてみることが大事なんじゃないかなと思ったので、言葉をいただきました」と意図を説明した。

記録に関しても「5000メートルで日本記録を出したい」と意欲を見せた。今季は7月に世界選手権が開催される。「(今季は)昨年度の成績を超えた上でもっと上で戦いたい」と誓った。【佐藤礼征】