今季初レースの5000メートルで12位中12位の最下位に沈んだ不破聖衣来(せいら、19=拓大2年)が右足の故障に見舞われた原因について、拓大女子陸上競技部の五十嵐利治監督は「体の成長よりもランナーの成長の方が大きかった」と説明した。

五十嵐監督によると、不破は1月の全国都道府県対抗女子駅伝(4区区間賞)を終えて体の違和感を訴えたという。最初に不安を覚えた座骨は2週間ほどで痛みが引いたが、その後に右アキレス腱(けん)周囲炎が判明。血行障害も見られたという。

「1回陸上競技から目線を外そうと、温泉治療をしたり、休むことが練習なんだよと(本人に伝えた)」。3月末まで歩行も控え、4月7日から40分のジョギングを開始。新年度に入った今月11日に1000メートルを1本走って本格的な練習を再開した段階で、本人の意思を尊重して今大会の出場を決めたという。

女子1万メートルで日本歴代2位(30分45秒21)を持つ不破はこの日、序盤から先頭集団に加わることなく、3分30秒前後のペースを保って走った。残り2周で先頭集団から周回遅れとなったものの、ケガなく走り終えたこと、一定のペースを刻めたことで「目標は達成できた」と五十嵐監督。照準を合わせる3週間後の日本選手権1万メートル(5月7日、東京・国立競技場)に向けて「生きた練習」を積むことを優先した。

不破は1年生だった昨季に大ブレークした。昨年12月の関西実業団ディスタンストライアル1万メートルで日本歴代2位、U-20日本新記録、日本学生新記録の30分45秒21をマーク。駅伝でも何度も「ごぼう抜き」を披露したが、本人の成長とは裏腹に体の負担も大きかったと五十嵐監督は話す。

「大学に入って一番取り組んだのは体づくりだが、自分の体と走りの成長の比率(が合っていない)。どんな選手でもやっぱりレースで手を抜くことはない。いろんな部分でも疲労が蓄積されて、今回の故障につながった。この故障が(全て)マイナスかと言ったらそうではない。次につなげるのが大事」。

不破と五十嵐監督が見据えるのは、24年パリ五輪(オリンピック)と、その先のマラソンでの金メダル。長い競技人生を見据えた上で、最善の決断を下しているという。