田中希実(22=豊田自動織機)が、過密日程を“完走”した。

今大会5本目のレースとなった5000メートル決勝に臨み、15分19秒35の12位だった。800メートル、1500メートル、5000メートルに出場した異例の挑戦が終わった。レース後は珍しく涙を流した。

中盤から先頭集団のペースアップに引き離された。レース後はトラックに倒れ込んだ。10日間で5レース。疲労との戦いだった。

感情を整理できず、涙が流れる。「昨日(のレース後)から何の涙か分からない涙がずっと出てきた」。明確な理由は分からないが、1つは結果への重圧だったという。1500メートルで日本勢初の入賞(8位)を果たした東京五輪など、世界大会では好成績が続いていた。

「目に見えて分かるタイムや順位が、最後までついてこないまま終わるんじゃないかという怖さがあった」。今大会は得意の1500メートルで日本人初の準決勝に進んだが、決勝には進めず。800メートルは予選敗退だった。

今後も幅広い距離で多種目に出続けるのか、種目を絞るのか、現段階では明言しなかった。23年ブダペスト大会、24年パリ五輪と世界大会は続く。「今回に懲りるのではく、今回の経験があったからこそ次につながるというふうに。その時の自分の心の向く方に挑戦していきたい」。世界選手権の日本勢で、1大会で個人3種目に出場した選手はいない。前例のない挑戦に向き合った経験を、必ず糧にする。【佐藤礼征】