21年東京オリンピック(五輪)8位入賞の一山麻緒(資生堂)が、取材エリアで涙を流し続けた。

日本人7番手の2時間31分52秒で14位。序盤こそ日本記録(2時間19分12秒)ペースの先頭集団に食らいついていたが、早くも8キロ付近から表情がやや険しくなる。10キロ手前から集団を引き離され、ゴール後はおえつを漏らし、涙で最初は話せないほどだった。深呼吸して自身を落ち着かせた後は、こう語った。

「早い段階から離されてしまって長い42・195キロになってしまったんですけど、本当に、走り切れたのは絶えず応援してくださった皆さんのおかげです。足を止めずに最後まで走ることができました」

「本当に今回は、事前の取材も…お断り…してしまって申し訳ないんですけれど、それぐらい余裕がなくって…。出ないことも考えたんですけど………。やっぱり、この東京マラソンに向けて『応援に行くからね』っていう方たちがたくさんいたので、走れないっていう決断をすることができなかったです」

3日の会見でも涙ながらに、昨年12月上旬に肋骨(ろっこつ)を疲労骨折していたことを告白していた。この日のレース後は「左側です。12月6日ぐらいから」と明らかにし、それでも強行出場したことに「本当に皆さんが応援してくださったから。今は痛みはないです」と言い訳せず、また声を震わせた。

24年パリ五輪の代表選考会「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」の出場権は既に得ていたが、逃げずに出場し、包まれた複雑な心情にあふれるものを抑えられなかった。

無駄にはしない。MGCへ、かつてないほど苦しみながら都心を走り抜いた中で、強い思いが内からこみ上げた。

「今日、走りながら『MGCで絶対に優勝してパリ五輪を決めたい』と思っていました。その気持ちを持ちながら走っていました」

最後は涙をぬぐった。潤んだ目にも、声にも、力強さが戻る。約5年ぶりの故障を乗り越え、再び夢舞台へ。この瞬間の覚悟を忘れることはない。【木下淳】

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