21年東京五輪代表の鈴木亜由子(31=日本郵政グループ)が復活した。

2位集団をけん引し、30キロ地点でロングスパート。自己ベストを10秒縮める2時間21分52秒で日本人トップの2位。東京五輪19位の悔しさを糧に「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」(10月15日、東京)で2大会連続の五輪切符を狙う。ルース・チェプンゲティッチ(28)が大会を連覇して、優勝賞金25万ドル(約3375万円)を得た。

   ◇   ◇   ◇

ゴール前で、両手をいっぱいに広げた。白い歯、輝く瞳。初の地元レースで日本人トップ&自己新の目標を果たした鈴木亜は、はじけるような笑顔で、高橋昌彦監督に飛び込んだ。

試走で狙った通りに30キロ地点で2位集団を抜け出し、35キロ地点で後続と35秒差。体をぶらさず小気味よい走りで、前半よりも後半にタイムを上げるネガティブスピリットでゴールした。 笑顔のゴールのようで、苦しさを秘めた懸命の走りだった。母・由美子さんは「昔から、苦しくなったら笑ったような顔になる」と明かす。マラソンで初めて出場した東京五輪は19位。その後も調子が出ず、冬には2カ月の休養を選んだ。たっぷりある時間を過ごしたのは地元の愛知。ゴルフやヨガで体を動かし、おいと一緒に走るなどして英気を養った。

人生初の休養から復帰後初のレースは、昨秋のベルリン。世界有数の高速コースで2時間22分2秒の自己ベストを更新して復活の兆しを示したが、地元・名古屋でさらに超えて見せた。

今後の目標は2時間20分切り。「自分の可能性を信じて頑張る」。けがなどの苦難にもじっと耐えて笑顔の復活を遂げた31歳はパリへ向けてさらに強くなる。【竹本穂乃加】

▽チェプンゲティッチ(圧勝で連覇)ペース設定が遅かったので、ひとりで行った方がいいと判断した。単独走は簡単じゃなかったけど、結果的に勝てて良かった。

○…鈴木亜と同じ東京五輪代表の前田は、自己ベスト2時間22分32秒の日本人2位で、MGCの権利を得た。鈴木亜に離されないように粘り強い走りを見せて「調子が良ければいけると思ってた。うれしい」。負傷などの影響でこの日が東京五輪以来となるレースだった。今後はMGCに向けて体調管理が優先。「メリハリをつけて練習したい」。

▽連覇したチェプンゲティッチ ペース設定が遅かったので、ひとりで行った方がいいと判断した。単独走は簡単じゃなかったけど、結果的に勝てて良かった。