走り終えると、田中希実(23=ニューバランス)は険しい表情で、強い風が吹く熊本の空を見上げた。3日のプロ転向発表後、初レースとして臨んだ女子1500メートルは、4分20秒11の2位。自身の日本記録(3分59秒19)には遠く及ばない結果に「全然良くなかった」と唇をかんだ。

練習では好調だった。「今季で一番いいタイムを狙える」とにらみ、序盤から上位につけた。中盤でトップに立ち、残り400メートルで逃げ切りを狙ったが、そこから失速。後藤夢(ユニクロ)に逆転を許し、突き放された。「今までは自分の走りが分からなくても、ラストで絶対に勝ちきることができていた。今日はダラダラっと終わってしまった」。眉間にしわを寄せ、肩を落とした。

「プロとして良い走りをしたい」。覚悟を固め、新たな所属先のニューバランスのユニホームに身を包んだ。田中の姿を一目見ようとスタンドに詰めかけたファンからは、この日一番の歓声が上がった。その期待に応えるためにどうするべきか。「なぜ走れなかったのかをもう1度見つめ直していきたい」。8月の世界選手権、来夏のパリ五輪へ。プロとして目指す走りを、追い求める。【藤塚大輔】