4月の学生個人選手権で3000メートル障害2位の順大・村尾雄己(2年)が、同種目予選1組に出場し、トップでゴールした。

2位に約1秒差をつける8分57秒45をマークし、14日の決勝へ進出。大学2年目の今季は、充実感を胸にシーズンを送っている。

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レースを終えた村尾は、更衣用のテントへ向かう時、2位となった早大・菖蒲敦司(4年)に声をかけられた。

「この天気で前に出られるのはすごいよ」

4月の学生個人選手権を制した先輩から、健闘をたたえられた。「そういう言葉をかけてもらえると、うれしいなって思います」。素直に喜びが込み上げた。

冷たい雨が降りしきる中、始まったレース。事前に長門俊介監督とは、ケガのリスクを低減させるため、集団はスローペースになると共有していた。それに付き合うと、ラストの勝負で必要以上に力を使ってしまうことも想像できた。

「そういうことを踏まえて、初めからリズムよくいくのが一番かなと。抜け出すことで集団に紛れ込まずに、落ち着いて走ることができる」

イメージ通り、序盤で先頭に立った。後続を突き放し、快調にペースを刻む。菖蒲からの言葉は「決勝を見据えての走り」を体現した先にあった。

村尾は謙遜しつつ、菖蒲とは「良いライバル関係」と位置付ける。翌日の決勝は、勝利だけを目指す意識では臨まないという。

「勝ちたいですけど、ライバルとして上回りたいという気持ちもあって。お互いの目標は世界であって、三浦(龍司)さんであって。同じ舞台を目指し、同じ目標を持つ人として、切磋琢磨(せっさたくま)したいなという思いもあります」

その思いが3週間前の学生個人選手権での言葉と重なる。菖蒲に逆転を許し、2位となったレース後。村尾は「悔しい」とは一言も口にせず、ただ、自分の現状を受け止めていた。

「力量の差を感じました。ここからさらに人一倍努力していかないと」「菖蒲さんとは、どのレースをとっても力は下回っていて。今回の数秒の差は、そもそもの走力の差でもあると思います」

目先の勝敗ではなく、他大学の実力者とのレースを通じ、自分の立ち位置を把握しようと努めていた。

あれから3週間がたった関東インカレ。やはり村尾は勝敗を意識せず、決勝を見据えていた。

「明日のレースは何としてでも勝ちたいっていう気持ちより、また走れるというワクワクが大きいです」

顔をクシャっとさせながら、明るく誓った。その高揚感を成長源とする。【藤塚大輔】