“世界基準となった”陸上男子100メートルで、サニブラウン・ハキーム(24=東レ)が貫禄を示す。

5月31日、8月の世界選手権(ブダペスト)代表選考を兼ねた日本選手権(大阪・ヤンマースタジアム長居)の前日会見に出席。2日間で行われる同種目は世界選手権と同じ第1日に予選1本、第2日に準決勝、決勝の計2本と内訳が変更となった。「ありがたい」と連覇への味方につける。

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今大会の100メートルは、8年ぶりに世界選手権の日程と同じ内訳となった。サニブラウンは「このラウンドで走る大会はそんなにない。世界選手権と同じ戦い方ができるのはありがたい」と世界を想定した試金石の場を歓迎した。

昨夏の世界選手権で日本人初の決勝を経験。「タイムは気づいたら出ていることが大体なので」。9秒台への過度な執着はない。身長190センチのスプリンターは静かに会見場を見渡し、余裕の表情を浮かべる。「(連覇を)意識はしていないが、やっぱり勝ちたい。しっかり気を緩めずにいく」。日本選手権で連覇となれば、12年まで4連覇した江里口匡史(大阪ガス短距離コーチ)以来、11年ぶりの快挙。今大会で参加標準記録(10秒00)を突破した時点で、世界選手権ブダペスト大会の代表に内定する。

昨年6月の同選手権。前日会見では、ヘルニアと格闘してきたことを告白した。あれから1年。苦悩の陰は見えない。「練習は結構、積めています」。米フロリダ州で海外選手とともにオフを過ごし、走り出しを改善。スターティングブロックを強く蹴ることに重きを置き、1歩目の反応を極めてきた。4月下旬には2レースに出場。「平均的に良くなってきた」と手応えを得ている。

今大会からは、新たに東レと所属契約を締結。企業名を背負って迎える初レースとなる。「良い姿を見せたいが、アスリートとしてすべき仕事は競技面では変わらない」。漂う貫禄は、昨夏の経験があったからこそ。「世界選手権で決勝にも進出した。自分が競技に専念することで、他の選手がついてきたり、『追い越そう』と思ってくれたりすればいい」。毅然(きぜん)とした態度で、目の前のレースを駆けていく。【藤塚大輔】