21年東京五輪代表の寺田明日香(33=ジャパンクリエイト)が、上位4人が12秒台という大激戦を制し、12秒95(向かい風1・2メートル)で2年ぶり5度目の優勝を決めた。日本選手権での12秒台の決着も初めて。

最後は4人が並ぶようにゴール。直後に8月の世界選手権(ハンガリー・ブダペスト)の参加標準記録(12秒78)を突破している福部真子(日本建設工業)の名前が電光掲示板に1位表示された。歓喜の涙を流す福部を、寺田も肩を抱いて祝福したが、その後、表示が修正されて、福部は4位で寺田の優勝が決まった。

複雑な心境のまま優勝インタビューを受けた寺田は「選手はショックを受けてしまうので、しっかり見て判断してほしい」と運営側の“チョンボ”にやんわりと苦言を呈した。

その福部とは準決勝から激戦を演じた。2着だったが1位福部とは同タイムの12秒97。その差は実に1000分の5秒差だった。「(決勝で)マイナスの風でそろって12秒台で走った。日本が少しずつ世界に近づいている。みんなで(タイムを)上げて、入賞ラインに近づければ」と話した。

19年に日本人で初めて12秒台に突入。21年には2度の日本記録更新。日本選手権では同大会史上最長ブランクの11年ぶりの優勝を果たし、東京五輪では日本人21年ぶりの準決勝進出を果たした。今季は12秒86の自己ベストを2度マークするなど安定した結果を残している。「1人抜けていけば、他の選手も抜けていく。私もその一員として力になれれば」と、これからも“上昇ニッポン”をけん引していく覚悟だ。