東京五輪女子1500メートル8位で兵庫の田中希実(24=ニューバランス)が、最高の走りでパリ五輪イヤーをスタートした。今年初戦に臨み、2区(4キロ)で衝撃の19人抜きで15年以来9年ぶりに区間賞。20位でたすきを受けて1位に浮上する離れ業だった。昨年17人抜きを披露した岡山のドルーリー朱瑛里(しぇり、津山高1年)も同じ2区で8人抜きの区間5位と好走。憧れの田中と走って五輪への憧れを口にした。宮城が2時間16分30秒で29年ぶり2度目の優勝を果たした。

大きなストライドで、1人、また1人と抜き去る。田中は「先頭を狙えないこともない」と前を見つめて約2・5キロ地点で首位浮上。残り1・5キロはもう抜く相手がいない。19人のごぼう抜きに「初めていっぱい抜く経験ができて楽しかった」と充実感を漂わせた。

女子5000メートルの日本記録保持者。ただ、この大会は中3だった15年以来区間賞を取れずにいた。「頑張ってもできない」。苦手意識がある上に、今年は8度目にして初の2区で出走。レース2日前の12日に試走してコースを確認。「情報量が多すぎて整理できない」というところからスタートして、区間記録12分7秒(09年小林祐梨子)に4秒差の12分11秒で、9年ぶりの区間賞。兵庫・浜本憲秀監督も「自分なりの方程式を求めたんだろう。初めてで10秒前後で走ったのは素晴らしい」と、最敬礼だ。

同区に登場した岡山のドルーリーにも気遣いを見せた。12分47秒で8人抜きの区間5位と健闘した16歳について「(レース後に)『私も追いかけたいです』という言葉ももらって、元気をもらいました」とにっこり。自分の背中を追ってくる次世代のランナーへ「伸び伸びと陸上を楽しいと思いながら、長く続けてほしい」とエールを送った。

今大会について「オリンピックくらい緊張していたかも」。年下の選手たちから目標とされる立場になり、緊張はあった。それでも異次元の走りで目標の区間賞もきっちりゲット。「メンタル面でパリオリンピックにつながると思う」。五輪イヤーを最高の形で滑り出した。【竹本穂乃加】

◆全国都道府県対抗女子駅伝のごぼう抜き 最多は29人抜きで2人。07年湯田友美(愛知)と09年小林祐梨子(兵庫)。3位は22人抜きの07年熊坂香織(山形)で、4位は20人抜きの同年西川生夏(熊本)。19人抜きの田中は、10年箱山侑香(長野)に並んで5位。5位までの記録は、すべて2区で記録されている。

【都道府県対抗女子駅伝】個人成績一覧