「東洋の魔神」は、箱根で復活する。来年1月の箱根駅伝で史上6校目の3連覇に挑む東洋大が11日、埼玉・川越キャンパスで練習を公開。今年まで山登りの5区で2年連続区間新記録を樹立したエース柏原竜二(3年)が「絶好調宣言」した。今季は、ケガや心身の疲労から不調も伝えられてきたが、ここに来て体調も自信も回復。「山の神」と呼ばれ05~07年に5区で樹立した今井正人(順大)以来2人目の、同一区間3年連続区間新に挑む。

 隠すことも、控えめに言うこともなかった。柏原は堂々と心情を打ち明けた。「今年は不調だ、不調だと言われ続けました。でも、本当に体調が良くなってきた。ワクワクして高ぶっているというか、早く箱根を走りたい。何も不安はないし、いけるんじゃないかな。条件次第だけど、区間記録(1時間17分08秒)に近い記録では絶対に走りたい」。胸の内にたまった鬱憤(うっぷん)を吐き出すかのように言った。

 前人未到の区間新を2年連続で樹立した今年の箱根後、確かに調子は上がらなかった。2月に右ひざ痛に悩まされ、練習不足から春のトラックレースは下位に沈んだ。10月の出雲駅伝はメンバー入りが見送られ、11月の全日本大学駅伝は区間4位にとどまった。

 「想定内だった」と佐藤尚コーチは言う。箱根ですべてを出し切り、心身共に大きな疲労が残った。回復には時間がかかるとみていた。だが、周囲の目は違い「不調」と騒がれた。焦りが練習不足のままレースに臨ませるという、悪循環を生んでしまった。だから「もがく」という自分の原点を見つめ直した。

 全日本後、全体練習の終わりに1人残った。400メートルを全力疾走し、本来は体調を整えて流す練習も全力で走った。「とりあえず全力で何かをやってみようと思った。もがきが足らなかった」。もがいてもがいて、その結果が復調への自信を生んだ。酒井俊幸監督は「状態は、昨年よりむしろ良い」と太鼓判を押した。

 前々回はトップと4分58秒差を大逆転し、今井の区間記録を47秒も更新した。前回はその記録をさらに10秒更新する圧倒的な山登りで、2連覇を後押しした。今回は史上3校目の3冠に挑む早大と火花を散らす。「2冠は正直すごい。でも、自分たちもミスがなければそれなりに戦えるはず。ここまでやられた以上、やり返したい」。復活の証しを、箱根の山で刻む。【今村健人】