20日に開幕するグランプリ(GP)シリーズ第1戦ロシア杯(モスクワ)から、18年平昌五輪に向けた勝負のシーズンが本格化する。今回のシリーズでは、世界を舞台に戦う日本人選手を紹介する。トップバッターはシニア1年目で、ロシア杯がGPデビュー戦となる坂本花織(17=シスメックス)。

 リンク上の坂本が「ボキボキッ」と聞き慣れない音を発信した。9日の近畿選手権女子フリー。名前を呼ばれ、声援に応えながら演技開始の位置に向かう最中だった。一瞬静まった会場で両手を握り、関節をぐりぐり…。「聞こえていましたか? 『やったるぞ!』って気合を…。結構いつもやるんですけれど、今日は関節の調子が良かったです!」。愛称「かおちゃん」はいつも自然体。周りは決まって笑顔になる。

 素顔は神戸野田2年の女子高生。最近は学年での大縄大会で朝礼台に立ち、準備体操を指揮した。「もう1人と『わあ~』って感じで結構、声を張りました。学校に行くまでが大変なんですけれどね、眠すぎて。でも行ったら、スカッとします」。普段は季節ごとに変わる兵庫県内の3つのリンクで練習の毎日。早朝練習後に向かう学校だが、元気な坂本の姿はスケート靴を脱いでも変わらない。

 競技を始めたのは4歳だった。スピードに乗った豪快なジャンプが代名詞。裏表のない性格に重なるスタイルで、3月の世界ジュニア選手権では3位に入った。だが、現状維持でシニアは通用しない。新フリー「アメリ」は細かい振り付けや、表現の落とし込みに苦戦。夏場には「頭がついていかない」と苦笑いした。

 落ち着いた曲調で表現するのは「不思議な子」。初めは硬い表情で「人形」になりきり、自らの手を見るしぐさから表情豊かな「人間」への変化を伝える。映画の舞台、フランスの振付師ブノワ・リショー氏に習ったステップは「今までは脚だけを動かしていた。上半身を前後左右に動かさないといけない。『これぞステップ』という感じ」。時には涙しながら、不慣れな要素に向き合ってきた。

 近畿選手権では国際スケート連盟非公認ながら、初の200点超えを記録し「(オリンピックの)オ・リぐらいまで見えてきた」。最高の笑顔を用意し、ロシアに旅立った。【松本航】

 ◆坂本花織(さかもと・かおり)2000年(平12)4月9日、神戸市生まれ。4歳でスケートを始める。17年4大陸女王の三原舞依とは小学校低学年からの仲で、共に中野園子コーチらの指導を受ける。16年全日本ジュニア選手権では本田真凜、白岩優奈らを抑えて初優勝。血液型B。158センチ。

<坂本のデータ>

 ◆今季SP曲 月光

 ◆今季フリー曲 アメリ

 ◆SPベスト 67・78点=17年3月

 ◆フリーベスト 127・76点=17年3月

 ◆合計ベスト 195・54点=17年3月

 ◆主な実績 17年世界ジュニア3位

 ◆代表的なジャンプ 3回転フリップ-3回転トーループ

 ◆趣味 水泳、折り紙

 ※ベストは国際スケート連盟公認