今季シニア1年目の本田真凜(16=大阪・関大高)を、指導する浜田コーチは「芸術家」と例える。「本当に読めないです、あの子は。能力もあるし、華もある。でもスピンで8回回らないといけないところで7回だったり、取りこぼしが多い。いいかげんなのがあの子のいいところなので…。(課題は)『集中力』です」と珍しい言葉が続く。

 16年世界ジュニア選手権で優勝。妹は女優の望結(13)で、小さい頃から注目されてきた。長く継続できないと言われ続ける「集中力」は、善しあしが表裏一体。2連覇を狙った今年3月の同選手権は2位だったが、SP、フリー共にノーミスと力を出し尽くした。フリーから一夜明けると、本田は「昨日、浜田先生と数えたけれど、今年のフリーは試合と練習を合わせても3回しかノーミスがなかった」と周囲を驚かせた。年3回の完璧な演技を一番の大舞台で発揮する、爆発的な集中力は魅力だ。

 男子シニアで戦う兄太一(19)は今年4月、妹の性格を本音でこう分析した。

 「スイッチのオンとオフがはっきりしているのが、真凜のいいところ。周りはそれを(長所として)いいように言ってくれるけれど、練習で(スイッチが)全く入らない日もある。それはなくさないと、シニアでは通用しないと思います」

 あれから半年。兄は「これまで1曲通したら『はい、終わり』って感じだった。それがいいフリーだった時も、もう1回やり直すようになった。集中している日が増えた」と変化を感じ取る。当の本田は言う。

 本田 五輪に行きたい、というのはすごくある。ジュニアの時みたいに追われているわけじゃないので、自分がどこまでいけるかワクワクしているし、スケートが楽しい。

 調子の波を楽しむように、大舞台で力を発揮したジュニア時代。大事な試合の繰り返しになるシニアは「この試合で何位になりたい、というのがない。終わってみて、結果がついてくれば」。新スタイルの先に、五輪を描く。【松本航】

 ◆本田真凜(ほんだ・まりん)2001年(平13)8月21日、京都府生まれ。2歳で競技を始める。全日本選手権は初出場の15年に9位、16年4位。16年世界ジュニア選手権で初出場初優勝し、17年はザギトワ(ロシア)に続く2位。家族は両親と姉、兄、妹2人。姉を除く4人が競技者で、妹の望結(13)と紗来(10)は女優と両立。161センチ。

本田のデータ
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