フィギュア界の一大拠点、関大に籍を置く細田采花(あやか、22)は今春、現役引退を撤回した。最後の大舞台と決めていた昨年12月の全日本選手権は自己最高の15位となり、涙を流した。そして今年1月の国体で競技人生に終止符を打つ…はずが2月、卒業前に足を運んだリンクで思わぬ展開となった。練習ながら、22歳でトリプルアクセル(3回転半)に初成功した。

 「『あっ、降りちゃった』って感じで…」

 国体直前、同じ浜田コーチから指導を受ける女子7人目の3回転半ジャンパー紀平梨花(15)から「采花ちゃんとトリプルアクセルを練習したい」と声をかけられた。「じゃあ、国体終わったら一緒にやろう!」。8学年下の妹分の隣で突然、大技が決まった。拍手と共に周囲からは「どうするの?」の声。4月に休学と現役続行を決め「氷に乗るだけで楽しいんです。本当にスケートが好きなんですよね」と練習に励む。

 小3で競技と出会い、小5になると長野・野辺山での全国有望新人発掘合宿に参加した。そこで刺激を受けたのが同い年の村上佳菜子。「私が『2回転ルッツ頑張ろう!』って時に、佳菜子はトリプル(3回転)跳んでいたんです」。スイッチが入り、大学までスケート一筋で駆け抜けた。日本スケート連盟の強化選手ではなく、大きな国際大会に縁はない。それでも細田は「トリプルアクセルをこの年で初めて跳んだら『遅咲き』と言われるんです。でも『私なりに端で咲いていました』みたいな」と笑い、努力に自信を持つ。

 10月の近畿選手権、11月の西日本選手権と、フリーで挑んだトリプルアクセルは転倒。6分間練習での成功を見ているファンも、実戦での成功を待つ。6年連続となる12月の全日本選手権出場を決め、自称「スケート界ではおばちゃん」の22歳は、大舞台での大技認定に集中した。

 「長い間スケートをしていたら、年下に抜かれたり、いろいろある。でも『最後まで頑張っていたら跳べるんだよ』って、そういうのを見せたいんです」

 トリプルアクセルで、人生を表現する。【松本航】

 ◆細田采花(ほそだ・あやか)1995年(平7)2月3日、大阪・吹田市生まれ。小3からスケートを始め、高1から宮原知子、本田真凜らと同じ浜田美栄コーチの指導を受ける。12年に全日本選手権へ初出場し20位。プロ野球阪神の金本監督の大ファンで「現役時代から根性が好き。競技にいちずな人が好きです」。155センチ。