「日本オリンピックミュージアム」が、ついにオープンした。


オリンピックミュージアムの外観
オリンピックミュージアムの外観

といってもイメージが湧かない方もいると思う。

国際オリンピック委員会があるスイスのローザンヌにもオリンピックミュージアムがあり、そこには歴史、概念、精神など、さまざまな角度から見たオリンピックが展示されている。初めて訪れた時、「こんなミュージアムが日本にもあったらいいな」とぼんやり考えていた。

そんなミュージアム。どんなところが「記念すべき」部分なのか。日本にオリンピックムーブメントの拠点となる場所ができたというだけではない。世界には各国NOC(National Olympic Committee)がある。日本でいうと、JOC(日本オリンピック委員会)だ。そのNOCが初めて運営するオリンピックミュージアムになるのだ。

またオリンピアンが運営、企画に参加することで、来館した方たちともコミュニケーションがとれ、オリンピックがより身近に感じられるだろう。

来年に東京2020大会を控えたタイミングのオープン。9月14日、多くの関係者がセレモニーに訪れた。JOC山下泰裕会長の言葉と共に、その歴史のスタートを切った。

ミュージアムは東京都新宿区「JAPAN SPORT OLYMPIC SQUARE」の1階と2階。日本のNF(National Federation)が入っている建物だ。目の前には新国立競技場、神宮球場、秩父宮ラグビー場と、スポーツに囲まれた環境にある。


オリンピックミュージアムのオープニングセレモニーの様子
オリンピックミュージアムのオープニングセレモニーの様子

内容を紹介したい。大きく3つのエリアに分かれている。1階はWELCOME AREA、2階はEXHIBITION AREA、外はMONUMENT AREAとなっている。「みんなのオリンピックミュージアム」をコンセプトに、内容がいろいろ考えられている。

実は私もオープンに携わらせてもらった。「オリンピックムーブメント」の拠点になったら最高だ。そうみんなで考えていた。簡単に言うと、オリンピックを広めていくことがオリンピックムーブメントだ。

そのオリンピックを広めることとは何かというと、「スポーツを通じて友情、連携、フェアプレーの精神を培い、相互に理解し合うことにより、平和でより良い世界の構築に貢献する」ということだ。

言葉だけみると、理解はできるけど実際はどういうことなの?と考えてしまう方もいるかもしれないが、つまり、スポーツができるということは平和であること。スポーツを通して、ベストを尽くして戦ったライバルは仲間であり友人であること。その仲間や友人がどこの国でどのような文化で育ってきたか、相手を理解することで争いがなくなり、平和へつながるのだ。

もしずっと一緒に遠征や大会で一緒だった他国の選手が、大会に何かの事情で出場できなかったら、心配になるはずだ。それがオリンピック精神だし、オリンピックムーブメント。この話を小学生や中学生、高校生に話すとみんな興味を持ってたくさん質問してくれる。

1階のWELCOME AREAは無料スペースで、ウエルカムビジョンがまずあり、その隣にはオリンピックのシンボルをデザインしたグラフィックがある。私はそこも写真を撮れる場所になりいいなと感じた。このグラフィックは、オリンピックについて学ぶワークショップに参加した小中学生が作ったオブジェがコラージュされているのだ。

その奥には、「オリンピックスタディセンター」があり、オリンピックを学べるスペースがある。今後はアクティブラーニングなども開かれる予定だ。

2階はEXHIBITION AREAの有料スペース。高校生以下の学生は無料、一般の方は500円で入館できる。古代オリンピックや、今までのトーチが並び、過去大会のことをタッチパネルなども使用しながら学ぶこともできる。また、トップアスリートがどれだけすごいのかを体験するコーナーもあり、かなり楽しむことができる。これまで出場してきたオリンピック選手の名前が大会ごとに連なっている。過去にどれだけの努力があったのかを学べる場所になる。

私の心が動いた、心に残った場所がある。それは「オリンピズムストーリー」だ。オリンピアンたちのインタビューを中心に、選手が感じたオリンピックの話をしてくれている。

ぜひ、そこでの話を聞いてもらいたいと思う。私が印象的だったのは平昌オリンピックで金メダルを獲得したスピードスケート小平奈緒選手の話だった。パラリンピックの話もあり、とても充実した内容になっている。

来年、東京オリンピック・パラリンピックがやってくる。人々の心にオリンピック精神が少しでも残ってもらえたら、とてもうれしいことだ。勝ち負けだけではない、どれだけ努力できたか、ベストを尽くせたか。そんなことが伝えられる拠点となってくれるミュージアムが完成したのは、アスリートだった私には、この上ない喜びだ。

(伊藤華英=北京、ロンドン五輪競泳代表)