先日、成蹊大学のオンライン授業に参加した。授業名は「World Sports」、テーマは「スポーツからみる世界」。そのゲストスピーカーとして参加させていただいた。
トライアスロンの歴史、マネジメント、メディアなどについて触れ、学生たちとスポーツをさまざまな観点からみていった。
その中で、興味深い点がいくつかあった。まずは、国によって「スポーツ」の要素が違うことだ。
イギリス発祥のスポーツは、パブリックスクールで教育を目的にしたものが多く、選手(プレーするものの)自身の自立心(自律心)やスポーツマンシップを身につけることが主となっており、幼い頃からその点にフォーカスしている。主な競技は、テニス、サッカー、ラグビー、ゴルフなどだ。
イギリスはトライアスロンも強い。先日開催されたワールドトライアスロンチャンピオンシップシリーズ・アブダビ大会(女子)では、12位以内に7人のイギリス人選手が入っている。強いだけでなく、彼女たちからは『自らが楽しみ、相手をたたえる気持ち(スポーツマンシップ)』が感じられる。
2019年8月に開催された東京オリンピックテスト大会では、イギリスの女子選手が喜びを分かち合い手をつなぎフィニッシュし、失格となってしまった。しかし、私はその光景をみて、彼女たちの人柄の良さを感じた。
一方で、アメリカ発祥のスポーツはマネジメント型と言われる。監督やコーチが采配をふるうタイプが多く、主な競技には、野球、バレーボール、バスケットボールがあげられる。
これらのスポーツは、監督やコーチが作戦を選手に伝えるためのタイムアウト(作戦タイム)があることが特徴だ。サッカーやラグビーではハーフタイムはあっても、試合中のタイムアウトはない。
観客やテレビ放送を意識したスペクテーター型スポーツ(見るスポーツ)とも言われ、メディアの影響でルールや用具などが変わることもある。
バレーボールのラリーポイント制やバスケットボールの4クオーター制などはテレビCMを意識したものとされる。スリーポイントシュートも見栄えや一発逆転を観客が楽しむことを意識して取り入れられたものと思われる。
もちろん、さまざまなスポーツでルールは変わってきていて、イギリス生まれのスポーツでもアメリカ的な要素もある。一概に言えないが、とても興味深い分類方法だと思う。
また、アメリカはスポーツビジネス王国と言われており、「魅せるスポーツ」に特化し、スポーツをビジネスとして成り立たせている。「スポーツをみる人」が増えたことによって、結果としてスポーツが広まり、一般人が「スポーツをする」ようになったという、変わった歴史をたどっているのだ。
成蹊大学でのオンライン授業を通して、「スポーツ」というジャンルの中でも見方を変えるだけでさまざまな発見があった。
スポーツの奥深さを追求することで、スポーツの視点が広がり、スポーツの楽しさを今まで以上に味わえることだろう。
(加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン代表)