夏本番。今年は梅雨の時期が短く、夏が早く訪れた。温暖化に加え、コロナ禍でのマスク生活により、暑さと向き合って生活していかなければならない。

私自身も2年前まではこの暑さの中、トレーニングをしていた。今はその時の自分に、『こんな暑い中よく練習していたな!』と言いたいところだ。

スポーツをやる時はもちろんのこと、日常生活を送る上でも「暑さ対策」が必要だ。今回は、私が行ってきた暑さに負けないための対策についてお伝えしたい。

中学生から社会人まで陸上競技に打ち込み、その後33歳までトライアスロン選手をしていたが、実は1度も熱中症や脱水症状になった事がない。ひとつは体質とも言われているが、加えて、スポーツ時、日常生活で工夫していたことがある。

トライアスロンのレース中には水をかけるなど対策を取る
トライアスロンのレース中には水をかけるなど対策を取る

<1>こまめな水分補給

当たり前に言われていることではあるが、ついクーラーの効いている室内にいると忘れがちだ。そこから外で動くことになった時、水分量が足りていないと脱水症状になる危険性がある。のどが渇くと感じる前に水分補給はしておくと良い。特に、この時期はミネラル補給も大切だ。

私は暑い場所でのレースの時は、1週間~10日前からウオーターローディングを行っていた。水分を意識的に摂るのだが、水だけでなく、そこにミネラルを加える。ガブガブと一気に飲んだり、夜にまとめて飲んだりすると、胃に負担がかかり、睡眠の妨げにもなる。日常生活の中でこまめに摂ることがポイントだ。

そうして、レース前に尿酸値を測り、脱水傾向ではないかチェックし、レースに挑んでいた。この方法はトライアスロンを始めてからナショナルチーム全体で用いられていた対策だったが、実際に脱水傾向のあった選手は脱水症状のためにフィニッシュ100メートル手前で倒れてしまったこともあった。

日頃から尿酸値を測ることは難しいので、セルフチェックとしては、自分の尿の色を確認すること。真っ黄色は脱水症状の危険サインだ。


<2>深部体温を冷やす

このことは東京オリンピックの対策を始めた5~6年前に知り、実践していた。

それまでは身体を温めることが大切だと思っていたため、冷やす事は避けていた。しかし、さまざまな研究や実体験の中から、レース前に体の中や皮膚の表面を冷やすことが熱中症対策に有効ということがわかった。

レース前にアイススラリーを食べたり、アイスベストを用いて体の芯を冷やす。そうすることで熱がこもらずパフォーマンスの向上につながる。

現に東京オリンピックのトライアスロン競技では、クーラーヘッドバンドや首に巻く冷却グッズ、手のひらを冷やす装具などを使用している選手が各国に多く見受けられた。

手のひらを冷やしてトレーニングしている様子
手のひらを冷やしてトレーニングしている様子

そもそもなぜ熱中症は起こるのか。人は体を動かすと、体内で熱が作られて体温が上昇する。体温が上がった時は、汗をかくこと(発汗)による気化熱や、心拍数の上昇や皮膚血管拡張によって体の表面から空気中に熱を逃がす熱放散で、体温を調節している。

しかしこの調節がうまくできなくなると、体の中に熱がたまって体温が上昇し、熱中症が引き起こる。

熱中症は「熱」がこもるのが大きな原因。だからレースやトレーニング時には体温より温度が低い水を体にかける事も心がけていた。水分摂取には限界があるが、水浴びならば可能だ。日常生活では大人が水浴びすることは難しいので、アイスノンのようなものを用いて、身体を冷やすのもいいだろう。


<3>夏野菜・果物を食べる

これは日常生活で常に意識していた。特に夏は運動すると内臓に疲労がたまりやすい。夏野菜には、水分やカリウムを豊富に含んでいるものが多く、身体にこもった熱を内部からクールダウンしてくれる作用がある。トマトやキュウリ、スイカなどが代表的だ。生で食べられるものも多いので、夏に不足しがちな栄養素を簡単に補給できるのが夏野菜の長所であり、食べ合わせでさらに効果は増す。

アスリートの時は、トマトに塩昆布、キュウリとお酢を合わせてよく食べていた。また、スイカは肝機能にも良い効果があるので、トレーニングの合間や終了後にも食べていた。


<4>暑熱順化

体が暑さに慣れることだ。暑い日が続くと体は次第に暑さに慣れて、暑さに強くなると言われている。そのため、暑さ対策として深部体温をあえて上げることも行っていた。

サウナや42度の湯船に入ったり、気温と湿度の高い部屋でトレーニングをしたりして、暑さに慣れていく。こちらもトライアスロンの選手たちが行っている方法だ。暑熱順化は数日から2週間後に効果が出ると言われているので、タイミングをみて行うことが大切になる。

ただ、これはアスリートには効果があると思うが、一般の方には強くはオススメしない。


以上のような暑さ対策は、アスリート向きのものもあるが、日常生活の中で取り入れられることも多いので、みなさんもしっかりと対策をして夏を乗り越えてほしい。

(加藤友里恵=リオデジャネイロ五輪トライアスロン代表)