5月1日~6日にかけて、東京アクアティクスセンターで、東京オリンピックの最終選考会である飛び込みワールドカップが行われた。

新型コロナウイルス感染拡大防止対策として、選手は1日おきに、会場に入るその他の人は毎日、PCR検査を受けることが義務づけられていた。結果が出るまでの1~2時間は外で待機。陰性であることが証明されて初めて場内へ入る許可が出る。

とても大掛かりな取り組みではあるが、場内にいる人は全て陰性だと分かっているので、感染予防対策をしながらも、比較的安心して過ごすことができた。


■飛板を見極めた三上紗也可

女子板飛び込み決勝で演技をする三上(撮影・菅敏)
女子板飛び込み決勝で演技をする三上(撮影・菅敏)

今回、選手たちは飛び板の扱いにとても苦戦しているように見えた。

選手は3枚ある板の中から、自分の好きな板を選ぶことが出来る。見た目は何ら変わりのない板。しかしそれぞれに質が違い、しなり方やはね返りの強さ、そして揺れるタイミングが全く違う。

自分に合う板を見つけ、いかにうまく使いこなせるかが、ベストパフォーマンスを発揮するためにはとても重要になってくる種目だ。

そんな中、女子板飛び込みでしっかりと板の性質をつかみ、見事6位入賞を果たしたのが、三上紗也可(20=日体大)だ。予選、準決勝ともに安定した演技を見せ、順調に決勝へとコマを進めた。決勝では、封印していた彼女の武器である5154B(前宙返り2回半2回ひねりえび型)を披露。2019年の世界選手権5位というプライドを、しっかりと見せつけてくれる結果となった。

3カ月後に控えたオリンピック。同じ会場、そして、試合の緊張感の中で5154Bを飛べたことも、とても大きな収穫になったに違いない。

オリンピックでは、さらに成長した彼女の演技が楽しみだ。


■「さすがに緊張した」

男子高飛び込み決勝で演技をする玉井(撮影・菅敏)
男子高飛び込み決勝で演技をする玉井(撮影・菅敏)

そして、やはり今回も注目を集めたのが、男子高飛び込みの玉井陸斗(14=JSS宝塚)だ。彼にとっては最初で最後のオリンピック選考会であった今大会。そして、初の大舞台。そんなプレッシャーの中でも、しっかりと存在感をアピールした。

彼は生まれながらにして、人並み外れた身体能力の持ち主だ。それに加えて、強靱(きょうじん)なメンタルを持ち合わせている。試合でも、全く緊張せずに本来の力を発揮し、いつも周囲を驚かせてきた。

そんな彼が、さすがに予選は緊張したと話していた。オリンピックに出場するには予選で18位以内に入ることが最低条件だったからだ。若干14歳。普通の感覚も持っていることに少しほっとした。

しかし、準決勝に進み、オリンピックが確実なものになると、また本来の強さを見せつけてきた。順調に決勝へ進み、決勝ではメダル争いに加わるほどの演技で会場を沸かせた。

結果は8位入賞。14歳にして、世界のトップ選手の仲間入りを果たした。優勝した飛び込み界のヒーロー、トーマス・デーリー(英国)も彼の才能を認めていた。

次回は快挙を達成した荒井祭里(20=JSS宝塚)について書きたい。(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)


三上紗也可(右)と筆者
三上紗也可(右)と筆者