オリンピック(五輪)に次ぐ競泳のビッグイベント、水泳世界選手権の競泳競技が26日、最終日を迎えた。全プログラムの最後を飾ったのは、男女の400メートルメドレーリレー。個人種目のメダリストたちがチームのために戦う「大会の華」だ。五輪でも、世界選手権でも、プールの盛り上がりは最高潮になる。

男子は個人種目で大躍進したイタリアが初の世界一に輝いた。背泳ぎのチェッコン、平泳ぎのマルティネンギと金メダリストを並べ、エースのドレセルが途中離脱した米国を振り切った。大会を締めくくるにふさわしい歴史的なレースだった。

もっとも、そこに日本の姿はなかった。男子は予選9位で敗退。女子は出場もしていない。「メドレーリレーには、その国の総合力が出る」と元五輪競泳代表の高橋繁浩氏。日本は上位8カ国に入るだけの総合力がなかったということだ。

実は、日本の得意種目だ。過去20年で男子は五輪3大会連続メダル、世界選手権でもメダル4個を獲得した。隠れた「お家芸」でもあるのだ。

かつては出場を見合わせたこともあったが、今は決勝の常連。男子の予選敗退は五輪では過去1度もなく、世界選手権でも82年大会で予選11位敗退が1度あるだけ。予選9位敗退の今回は、40年ぶりの屈辱になる。

第3泳者、バタフライの水沼尚輝が失速した。前日100メートルで銀メダルを獲得したばかり。疲労もあっただろうし、興奮で寝不足だったのかもしれない。「申し訳ない」と涙したが、万全の状態で送り出せなかった周囲にも責任はある。

背泳ぎの入江は個人種目を棄権してリレーに備えたが、まさかの予選落ち。落胆ぶりは相当なものだった。スタンドの視線をすべて集めて臨むはずだった決勝を、代表になって初めてスタンドで見ることになった。

日本人はリレーが好きだ。陸上の400メートルリレー、箱根駅伝、スキージャンプの団体戦…。選手たちが互いに協力し、力を合わせて目標を達成する姿が感動を呼ぶ。もちろん、水泳でも同じだ。

12年ロンドン五輪、レース後に松田丈志が言った「(北島)康介さんを手ぶらで帰すわけにはいかない」は、流行語になった。仲間を思う気持ちがチームの「絆」を強くし、個人種目以上の力を生み出す。それが、日本人の琴線に触れる。

来年7月には福岡で世界選手権が行われる。24年にはパリ五輪がある。今大会4個のメダルを獲得した日本だが、全体的に見ればいまひとつ成績だった。海外の10代選手の台頭などで、世界との差は確実に広がった。

だからこそ、メドレーリレーには頑張ってほしい。陸上なら男子マラソン、柔道なら最重量級とプログラム最後の種目の成績が、その競技全体に与える印象は大きい。決勝レースに臨めるのは、世界で男女各8カ国32選手だけ。そこに日本がいないのは、寂しすぎる。(ニッカンスポーツ・コム/記者コラム「OGGIのOh! Olympic」)