11月16日、兵庫県姫路市にあるウインク体育館はピンクに染まっていた。

バレーボールのVリーグ女子。今季からV1(1部)で戦い、わずか1勝(8敗)だった姫路が3-0(25-22、25-20、25-23)で昨季女王の久光製薬から金星を挙げた。チケットは完売。地元姫路のファンによる大歓声が、ピンクのユニホームを着た選手たちを包み込んだ。

記者席から熱戦を眺め、自然と目で追ってしまう選手がいた。姫路の背番号7を担う堀込奈央(23)だった。セッターはゲームの組み立てが重要な役割だが、印象的だったのは地面すれすれのボールをとにかく拾うレシーブ。バレーボール選手としては小柄な158センチの体を、常にフル稼働させていた。

その姿をコートの外から見つめていたのが、12年ロンドンオリンピック(五輪)銅メダルなど、日本代表として一時代を築いた竹下佳江監督(41)だった。ポジションは同じセッター。大阪・金蘭会高から龍谷大に進み、今春に大学を卒業した堀込について冷静に評価を下した。

「ディフェンスはいいものを持っています。セッターとしての組み立ては、シーズンを通して学んでいっています」

堀込がバレーボールを始めたのは小2だった。04年アテネ五輪をテレビで観戦し、その魅力に引き込まれたという。竹下監督は当時26歳の主力選手。柳本晶一監督率いる日本代表は5位入賞を果たした。久光製薬戦後、竹下監督も同席していた記者会見場で、堀込は照れながら笑った。

「『(竹下監督は)テレビの中の人やな』って印象でした」

159センチの体で日本を背負った竹下監督だからこそ、同じポジションの教え子を見つめる目は厳しい。「要求は厳しいことをたくさん言っている」と認め、食らいついてくる堀込の姿勢をたたえた。

「それに耐えられる選手。メンタルの強さは重要ですよね。セッターは(他の)5人を動かさないといけないポジション。芯がぶれるか、ぶれないかは重要です。責任を持って、1つ1つを積み重ねて、経験値を上げていってほしい」

久光製薬との試合前時点で、今季奪ったセット数は5。対照的に24セットを失い、6試合のストレート負けを経験した。V1の高いレベルでもまれながら、堀込は「1枚で打たせる形に持っていきたい。ブロックの高さもある」と誓う。優位な攻撃の形を作り上げることが課題。その上で「ディグ(アタックレシーブ)ができるセッターを目指しています」と、竹下監督も認めた長所のアピールも忘れなかった。

16年、日本初のプロバレーボールチームとして発足した姫路の公式サイトには「好きな言葉、座右の銘」という欄がある。堀込にその話題を振ってみると「もちろん(何と書いたか)覚えています」と笑顔でうなずいた。

-人生、死ぬこと以外はかすり傷-

その言葉を体現するような、恐れ知らずのレシーブは一見の価値がある。【松本航】(ニッカンスポーツ・コム/スポーツコラム「We Love Sports」)

◆松本航(まつもと・わたる)1991年(平3)3月17日、兵庫・宝塚市生まれ。武庫荘総合高、大体大とラグビー部に所属。13年10月に日刊スポーツ大阪本社へ入社し、プロ野球阪神担当。15年11月から西日本の五輪競技やラグビーを担当し、平昌五輪ではフィギュアスケートとショートトラックを中心に取材。

16日、大勢のファンに見守られて久光製薬戦を振り返る姫路の竹下佳江監督(撮影・松本航)
16日、大勢のファンに見守られて久光製薬戦を振り返る姫路の竹下佳江監督(撮影・松本航)